北海道大学病院放射線科の神島保氏

 関節リウマチ(RA)の重要な病態である滑膜の炎症性変化を直接観察できる画像診断として、MRIは大きな注目を集めている。北海道大学病院放射線科の神島保氏らは、生物学的製剤を投与した場合の効果判定の指標として、造影MRIを用いた炎症性滑膜体積の定量の有用性を検討、4月23日から26日まで、東京で開催された第53回日本リウマチ学会総会・学術集会で報告した。

 生物学的製剤が導入されてから、RA治療の目標は単なる臨床症状の抑制から関節破壊の抑制へとシフトした。同時に治療の効果判定の指標も、従来の臨床症状に基づくものから、炎症や関節破壊の程度を画像診断などで評価するものが多く用いられるようになってきた。

 一般に、MRI画像からRAの疾患活動性を定量する方法としては、OMERACTグループ(※)が提唱するRAMRISが知られている。しかし、本法は評価が煩雑で主観的という点がしばしば指摘され、日常臨床で使用するには現実的とは言えない。そこで、MRI画像でRAの病勢を評価する簡便かつ再現性の高い方法の開発が期待されていた。

 今回、神島氏らは、RA患者の造影MRI画像を自動解析するソフトウェアを作成し、RAの関節における炎症性滑膜体積を自動測定することで、生物学的製剤の治療効果を定量的に判定する試みを行った。

 対象は、治療前に全身の関節造影MRIが施行されたRA患者16例(女性13例、男性3例、平均年齢56.6歳、インフリキシマブ11例、エタネルセプト5例)である。

 治療前後に撮影したMRI画像はワークステーションで解析し、筋肉の信号を基準に閾値設定を行うことで、滑膜体積を自動算出した。これとは別に、治療前および14週後の疼痛関節数腫脹関節数VASESRCRPを測定、DAS28スコアを算出し、臨床的な治療効果と画像的な滑膜炎抑制効果を比較検討した。

 生物学的製剤の投与によって、疼痛関数数、腫脹関節数、VAS、ESR、CRPは有意に低下し、DAS28-ESRスコアは4.9±1.5から3.1±1.5に、DAS28-CRPスコアは4.3±1.3から2.7±1.3に、それぞれ有意に低下した。

 この間、手根部の滑膜体積定量値は、治療前の12.4±7.7cm3から、14週後には7.3±7.8 cm3に有意に低下した(p<0.0007)。治療前のDAS28-ESRスコアと治療前の手根部滑膜体積定量値には有意な正の相関が認められたが、臨床的な治療効果指標である治療前後のDAS28スコアの差(改善度)と、同じく治療前後の滑膜体積定量値の差には有意な関連性は認められなかった。

 神島氏らが試みた定量法は、ワークステーションを用い、MR画像上で異常な増強を示した滑膜体積を正常筋肉の信号を閾値として計測する方法であり、既存の手法に比べ、簡便かつ客観的な方法として期待される。

 今回の検討では、治療前のDAS28スコアと治療前の手根部滑膜体積の定量値には有意な正の相関が認められ、生物学的製剤の投与によって滑膜体積定量値は有意に低下した。こうした結果を踏まえて神島氏は、MRI画像を用いて客観的にRAの病勢や治療効果を評価できる可能性は高く、本法は予後予測の指標として使用できる可能性もあると述べた。


※OMERACT(Outcome Measures in Rheumatoid Arthritis Clinical Trial)は、リウマチ分野における臨床試験のアウトカム測定に関するコンセンサス会議。