東邦大学医療センター大森病院整形外科の窪田綾子氏

 エタネルセプト使用下での周術期休薬期間は、ガイドラインよりも短くできるのではないか――。4月23日から26日まで、東京で開催された第53回日本リウマチ学会総会・学術集会のシンポジウム「生物学的製剤使用下での手術のタイミング」において、東邦大学医療センター大森病院整形外科の窪田綾子氏が研究成果を報告した。

 国内では、関節リウマチの治療に、抗TNFαキメラモノクローナル抗体のインフリキシマブ、ヒト型可溶性TNFα受容体のエタネルセプト、ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体のトシリズマブ、ヒト型抗TNFαモノクローナル抗体のアダリムマブの4つの生物学的製剤が使用できるようになり、生物学的製剤使用下での手術症例も増えている。

 窪田氏らは、2006年1月から2009年3月までに同院で手術を行った症例を、抗TNFα生物学的製剤使用群と非使用群に分け、創治癒の遅延と、30日以内の早期感染症罹患の2点について比較検討した。

 使用群は、82例112関節で、患者背景は平均年齢59.0歳、平均罹病期間15.8年。非使用群は、240例266関節で、平均年齢62.4歳、平均罹病期間16.0年だった。検討の結果、生物学的製剤を使用した群で、創治癒遅延や感染症、有害事象の発現が増える傾向はみられなかった。

 対象となった症例では、紹介元の医療機関での処方が多いエタネルセプトの使用例が多く、73症例101関節に上った。インフリキシマブとアダリムマブの使用例は少なかった。エタネルセプト群の患者背景は、平均年齢が59.4歳、平均罹病期間は15.8年。症例数が多かったのは、人工膝関節置換手術の39症例、足趾形成術の16症例だった。

 日本リウマチ学会のガイドラインでは、エタネルセプト使用時の周術期の休薬期間は、術前が14日、術後の再開は抜糸後(10日から14日)とされている。これに対して、窪田氏らが手術を行った症例では、術前の平均休薬期間は11.3日とガイドラインよりも短かった。

 そこで、窪田氏はガイドラインに示されている術前の休薬期間である14日を境にして、創治癒遅延の発現率を調べた。その結果、14日以下の休薬期間だった88関節のうち、創治癒遅延が見られたのは7関節で発現率は7.9% 。これに対して、15日以上の休薬期間だった13関節のうち創治癒遅延が見られたのは3関節で、発現率は23.1%と14日以下の群での創治癒遅延の発現率の方が低く、エタネルセプト使用時の術前の休薬期間は、ガイドラインよりも短くできる可能性が示された。

 もっとも、手術部位や疾患の活動性によって、休薬期間は一律ではない。窪田氏は、同院での周術期の休薬期間について、「膝や股関節など大きな部位では休薬期間を長めに、人工物を使わない小関節では短めにしている」と話す。また、若い女性など、もともと疾患活動性が高い患者では、急性増悪を防ぐために早めに投薬を再開することを考慮する必要があるとしていた。