北里大学医学部膠原病感染内科学の廣畑俊成氏

 難治性網膜ぶどう膜炎に対して高い有効性を示すインフリキシマブが、特殊型ベーチェットに対してどのような効果をもたらすのか。北里大学医学部膠原病感染内科学の廣畑俊成氏らは、4月23〜26日まで東京で開催されている第53回日本リウマチ学会総会・学術集会で、その可能性について報告した。

 わが国では、ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎に対し、2007年からインフリキシマブが臨床適応されている。ベーチェット病は、口腔内アフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、眼病変を主要症状とするが、特殊型として脳幹、小脳、大脳白質の病変を主体とする神経ベーチェット、腸管に潰瘍性病変を来す腸管ベーチェット、大小の動静脈に病変を来す血管ベーチェットが知られている。

 神経ベーチェットは、急性型と慢性進行型に大別される。後者では急性発作が治まった後に痴呆様の精神神経症状や歩行障害、構語障害がみられ、慢性的な進行をたどる。また、脳脊髄液中のIL-6が著しく上昇し、MRI所見では脳幹部の萎縮が認められる。治療抵抗性で、ステロイドには全く反応せず、シクロホスファミドアザチオプリンも無効、メトトレキサート(MTX)のパルス療法のみが有効とされる。廣畑氏らは、MTX投与によって脳脊髄液中IL-6濃度の低下、知能指数(WAIS-R)の低下が抑制されることを確認している。

 慢性進行型神経ベーチェット患者5例に対し、廣畑氏らがインフリキシマブの投与を試みたところ、投与翌日に脳髄液中のIL-6濃度が有意に低下した。しかし、脳脊髄液中のTNFα濃度は変動しなかったことから、インフリキシマブによるIL-6低下は、抗TNFα作用とは独立した機序である可能性が示唆された。さらに、IL-6の推移を長期的に追跡したところ、喫煙がIL-6高値持続の寄与因子である可能性が示された。

 なお、この検討では、WAIS-R、脳幹のMRI所見に有意な変動は認められなかったが、本疾患が進行性であることから、インフリキシマブの投与によって病態の進行が抑制されたものと考えられる。

 一方、難治性腸管ベーチェット病に対してもインフリキシマブの有効性を示唆した症例報告があるものの、廣畑氏らの自験例では、インフリキシマブ単独による症状のコントロールは難しく、免疫抑制剤との併用療法などを検討する必要があるという。

 廣畑氏はベーチェット病治療におけるインフリキシマブの可能性を探るには、臨床試験による検討が必要であると述べ、講演を終えた。