九州大学病院免疫・膠原病・感染症内科の押領司健介氏

 全身性エリテマトーデスSLE)患者では、動脈硬化性心血管病変の罹患率やそれによる死亡率が健常人より高いことが明らかにされている。しかし、動脈硬化の程度と相関するとされる頸動脈内膜中膜複合体厚IMT)を、女性SLE患者で精密に測定した研究で、IMTは疾患活動性が高いほど大きかったものの、健常女性に比べるとむしろ小さいという結果が得られた。SLEの疾患活動性とSLEに対する免疫抑制がIMTに影響した可能性があるという。九州大学病院免疫・膠原病・感染症内科の押領司健介氏らの成果で、第52回日本リウマチ学会のワークショップ「SLEの臨床2」で報告された。

 近年、動脈硬化と炎症との関連が大きく注目されるようになった。炎症性自己免疫疾患の患者で心血管イベントが多いことは以前から知られていたが、現在では、疾患そのものが動脈硬化を促進すると考えられており、関節リウマチ(RA)では冠動脈疾患のリスクが3〜4倍高いと報告されている。SLE患者では、1〜2割が冠動脈疾患を発症すること、特にlate phaseでは、冠動脈疾患が死因の大半を占めることが明らかにされている。

 押領司氏らは今回、女性SLE患者を対象に、動脈硬化の程度を定量的に評価できるIMTを頸動脈エコーで測定した。通常のエコー装置は測定精度が0.1mm程度で、IMTの経時的変化がわずかな自己免疫疾患のIMT(平均増大度0.01mm/年)を精密に測定することは難しい。このため、250カ所の平均IMTを自動計測するソフトウエア(IntimaScope)により、0.01mm単位で評価可能となったエコーシステムを用いた。

 対象は、女性SLE患者92人と健常女性184人。女性に絞ったのは、SLEが女性に多く、またIMTには性差が大きく影響するため。SLE患者の平均罹病期間は14年。疾患活動性の指標であるSLEDAI(Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index;3〜5が中等度、6以上が高度)は平均4.0だった。

 SLEDAIや、疾患によるダメージの指標であるSDI(SLICC/ACR Damage Index)、ステロイド使用率、糖尿病有病率などは、これまでの報告と同等のレベルだった。プラークは30%の症例で認められ、健常人で報告されている10数%に比べると多い印象を受けたという。

 SLE群の背景からは、SLE患者は健常人よりも動脈硬化が進展している可能性が高いと推測された。実際、SLE患者ではIMTが大きいというデータも報告されている。しかし、今回の検討では、SLE群のIMTは健常群に比べて有意に小さいという予想外の結果だった。ただし、今回の結果と同様の成績が昨年、New England Journal of Medicine誌で報告されている。

 一方、SLEの疾患活動性との関係を見ると、IMTは疾患活動性が高いほど大きいことがわかった。SLEDAIが6以上の疾患活動性の高い群のIMTは、疾患活動性中等度の群に比べて有意に大きかった。

 動脈硬化の最初のステップとされる血管内皮への白血球浸潤は、NF-κBなどの内皮活性化遺伝子群の転写による接着因子ケモカインの発現によって促進される。しかし、ステロイド、免疫抑制剤TNF阻害薬スタチンなどを使用すると、内皮活性化遺伝子群の転写が抑制され、抗動脈硬化の方向に動く可能性があると指摘されている。

 今回の結果から押領司氏は、「SLEの疾患活動性とSLEに対する免疫抑制が、IMTに影響する可能性がある」と結論したうえで、「疾患活動性の高いSLE患者に対して、早期から積極的な免疫抑制的な治療を行うことにより、動脈硬化の進展を抑えられるかもしれない」と語った。