順天堂大学膠原病内科の草生真規雄氏

 薬剤抵抗性関節リウマチRA)に対する治療法の一つとして、白血球除去療法LCAP)の有効性が報告され、実施施設が増えている。しかし、効果発現のメカニズムについてはいまだ不明な点も多い。LCAP前後の末梢血中における遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイ法により検討した研究から、効果発現には、何らかのmRNAあるいはたんぱく質の減少だけでなく、遺伝子産物の発現量増加や分布の変化も関与している可能性が示唆された。順天堂大学膠原病内科の草生真規雄氏らの研究成果で、第52回日本リウマチ学会のポスターセッションで4月21日に発表した。

 薬物療法の進歩に伴い、RAの治療成績は明らかに向上してきた。しかし、一方で、効果が得られない症例や副作用や合併症のために実施できない症例が存在するのも確か。こうした症例に対して、LCAPは重要な治療オプションとなっている。有効性については、メトトレキサートMTX)抵抗性症例で、ACR(American College of Rheumatology)コアセットの20%改善が50〜80%、50%改善が20〜50%という比較的高い奏功率が報告されており、安全性にも大きな問題はないと考えられている。

 効果発現のメカニズムに関するこれまでの検討からは、治療後に末梢血中で骨髄由来と考えられるCD34陽性細胞の動員が認められる、LCAP後に末梢血中のTNFαやIL-6の発現が減少する、LCAP後の末梢血から分離した単核球をIL-1などで刺激すると炎症性サイトカインの産生能が低下する、などといった知見が得られている。しかし、このような好ましい変化が、白血球を除去することによってなぜ起こるのかは明らかではない。また、LCAP後に、G-CSFなどの増加に先立って一過性の末梢血白血球の増加が認められているが、この現象が生じる機序も不明のままだ。

 そこで草生氏らは、1回目のLCAP前後(間隔は約2時間)に採取したRA患者の末梢血(全血)からRNAを抽出。約2万5000遺伝子産物の発現を同時に観察できるDNAマイクロアレイを用いて、LCAPによる遺伝子発現量の変化を検討した。

 LCAPが有効だったRA患者7例の末梢血から抽出したmRNAサンプルを用い、2万4267個の遺伝子産物の発現量をLCAP前後で比較したところ、LCAP後に発現レベルが2分の1以下に減少した遺伝子産物は1119個で、そのうち4分1以下に減少したものが103個、8分の1以下に減少したものが9個認められた。

 一方、LCAP後に発現レベルが2倍以上に増加した遺伝子産物は882個、そのうち4倍以上に増加したものは197個、8倍以上に増加したものは66個認められた。なかにはLCAP前後で発現レベルが200倍以上に増加した遺伝子産物も見受けられた。LCAP前後の変化率は、発現レベルが減少した遺伝子群よりも増加した遺伝子群のほうが大きかった。

 これらの結果から、草生氏は「LCAPが有効となる理由を説明できる明らかな機序はいまだ不明だが、その効果は単純に白血球成分を取り除くことにより、ある種のmRNAあるいは蛋白が減少するという機序だけではなく、何らかの遺伝子産物の発現量の増加や分布の変化が関連している可能性もあることが示された」と述べた。