インフリキシマブIFX)をはじめとする生物学的製剤は、関節リウマチRA)に対してきわめて高い疾患制御をもたらす一方で、感染症のリスク上昇も懸念される。しかし、IFXはメトトレキサートMTX)やステロイドと併用されることがほとんどであるため、IFX単独で感染症発症の危険因子となるか否かは定かではない。そこで産業医科大学第一内科の鈴木克典氏らは、自施設にてMTXが投与された700例をIFX使用者(IFX群:n=205)と非使用者(MTX群:n=495)に分け、両群の感染症発症状況を比較した結果、IFXは単独では感染症リスクを増加させないことを明らかにした。

 観察期間は2003〜2006年の4年間であり、最初の感染症発現をエンドポイントとして、感染症非発症生存率をKaplan-Meier法で比較した。MTX群の患者はIFX群に比して平均罹病期間が若干長い(132±110カ月 vs 112±110カ月、p<0.05)という違いがみられたが、年齢や性比、病期、MTX投与量、ステロイド投与量など、罹病期間以外の主な背景因子に有意差は認められなかった。また、ベースライン時のCRP値、赤沈も同等であった。

 全700例における有害事象の発現は218件(29.8%)であり、うち感染症は151件、発生率は21.5%であった。内訳をみると、MTX群における感染症発現は108件(21.8%)、IFX群における発現は43件(20.9%)であり、両群の発現率は同等であった。同様に、全体における重篤な感染症の発生は101件(14.4%)、MTX群における発生は108件(14.9%)、IFX群における発生は43件(13.1%)と同等であった。

 次に鈴木氏らは、両群の患者の背景因子を独立変数、感染症発生を従属変数とする多変量解析を行い、感染症発生に寄与する危険因子の同定を試みた。その結果、いずれの群においても危険因子として、高齢、呼吸器疾患の既往、糖尿病、リンパ球減少、低アルブミン血症、低γグロブリン血症、ステロイドの併用の各因子と感染症発生との間に有意な相関が認められた。

 なかでも最も強い相関を示した因子は、ステロイドの併用と低アルブミン血症であり、前者は用量依存的に感染症のリスクを増大させた。また、血清アルブミン値は20%以上の低下を来すと、感染症の発生率は有意に増大した。

 以上より、感染症の発症にはステロイドの使用や低アルブミン血症などの因子の関与が大きく、IFXの使用自体はコンベンショナルな治療以上に感染症のリスクを高めるものではないことが示唆された。鈴木氏は、「感染症抑止のためには、漫然とステロイドを使用しないように努めるとともに、低アルブミン血症の出現に注意し、これを認めた場合は原因検索に努めるなど、危険因子への十分な配慮が重要だ」と述べた。

 なお、一般的に言って、新たな治療法の安全性には、コンベンショナルな治療よりいっそう注意深い観察が向けられがちである。にもかかわらず、両群の感染症発生率に差が認められなかったことは大きい。フロアからは、「観察者の『バイアス』を勘案すれば、IFX群の感染症発生率は、むしろMTX群より低いという可能性もあるのではないか」とのコメントが寄せられた。