函館五稜郭病院整形外科の北村公一氏

 関節リウマチRA)は、治療開始の遅れがその後の関節破壊の進行に大きな影響を及ぼすことが知られており、「window of opportunity(治療機会の窓)」すなわち、発症後なるべく早期から積極的に強い治療薬を用いるべきとされている。しかし、生物学的製剤が用いて治療を行った症例であっても整形外科による手術が必要となる場面は少なくなく、生物学的製剤使用下での手術の安全性の確認は重要な案件となっている。函館五稜郭病院整形外科の北村公一氏らは、生物学的製剤が手術に与える影響と、手術が生物学的製剤の効果に与える影響の双方について検討、生物学的製剤が手術に影響を及ぼすことはないが、手術が生物学的製剤の効果に影響する可能性があることを報告した。

 同氏らはまず、生物学的製剤使用下で手術を行った34例(インフリキシマブ使用例33例、エタネルセプト使用例1例)と、同時期に手術を行った生物学的製剤未使用のRA患者175症例における術後合併症発症頻度の比較を行った。その結果、生物学的製剤使用群では未使用群に比して高用量のステロイドが投与される傾向にあった(7.7mg/日 vs 4.7mg/日)にもかかわらず、感染症および創治癒遅延の発症率に有意な差は認められなかった(5.3% vs 3.6%、p=0.58)。

 なお、生物学的製剤使用群における手術のタイミングは、生物学的製剤投与前に手術を行ったケースが6例、投与開始後に手術を行ったケースが32例であり、最終投与から手術までの期間は4〜55日(平均33.3日)であった。北村氏は、「手術はどの時期でも実施可能」であるとしながらも、一般に生物学的製剤投与例における感染症の発生は同薬の導入初期に多いとする報告が多いことから、「緊急手術でない限り、生物学的製剤導入早期の手術は避けるほうが無難であろう」と述べた。

 次に同氏らは、手術が生物学的製剤の効果に与える影響を検討するために、生物学的製剤使用群のうち血清MMP-3値を測定し得た28例について、術前後のMMP-3値の比較を行った。その結果、22例では術後もMMP-3値は不変(15例)ないし減少(7例)し、増加を来した症例は6例であった。

 すなわち、22例は生物学的製剤の効果が不変もしくは改善したが、3例は手術によって生物学的製剤への反応性が低下したものと考えられる。北村氏は、実際の症例を呈示し、MMP-3値が低下したケースは良好な経過を辿ったのに対し、MMP-3値が上昇したケースは経過が不良であったことを紹介した。

 以上より、生物学的製剤の使用により術後の合併症が増加することはなく、その使用中にも手術の実施は可能と考えられた。しかし、「その場合は以降のRA治療に影響が出る場合があることや、生物学的製剤の開始後数カ月は感染の危険性が高まる可能性があることを念頭に置くことが必要だ」と北村氏は述べた。