東京女子医科大学東医療センターの神戸克明氏

 関節リウマチRA)に対するインフリキシマブIFX)による治療成績のデータは、着々と蓄積が進んでいるが、整形外科領域における手術への影響は明らかではない。IFX治療者43例への手術経験をもつ東京女子医科大学東医療センターの神戸克明氏らは、その成績を検討した結果、IFXにより術後感染症のリスクが増大することはなかったことを報告。さらに、IFX効果不十分例においても、滑膜切除による副次的な効果でIFXの効果が高まる可能性を示した。

 同氏らの施設では、これまでに186例のRA患者にIFX治療を行い、うち43例に手術を施行している。手術内容の内訳は、人工膝関節置換術10例、人工股関節置換術4例、人工肩関節置換術人工肘関節置換術各3例、関節鏡下滑膜切除術15例、足趾形成術3例、脊椎固定術2例、手関節形成術1例、骨折2例であった。また、手術施行時期は、IFX投与後平均32日(4.6週)後であった。

 手術により、これらの患者の平均CRP値は術前の3.6±0.5mg/dLから1.2±0.4mg/dLへと改善し、DAS28も5.6±0.2から3.6±1.2へと改善された。また、術後感染症の発生は、足趾形成術を行った1例と脊椎固定術を行った1例の計2例に認められたが、深部感染の発現はなく、4.65%という術後感染症発生率は通常の手術例に比して特に高率ではなかった。

 また、43例中7例は、IFXの効果不十分に対するサルベージとして滑膜切除術が施行された症例であったが、切除術の施行によりCRP値は著明に低下し、術後50週目においても良好に維持されていた。神戸氏らの施設において滑膜切除術を行ったIFX未使用患者の場合、21%は3年以内に関節置換術の施行を余儀なくされたが、IFX使用者ではこれまでのところ関節置換術を施行した患者は皆無だという。

 以上の事実は、IFXによる治療は関節手術の成績に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ治療成績の向上が期待できるという可能性を示唆する。薬物治療を主体としたRA診療においては、IFXが無効、あるいは経過観察中に効果不十分となった場合、他剤への切り替えを考慮することが普通であるが、神戸氏は「整形外科との連携を密にし、手術という選択肢を考慮してほしい」と述べた。

 なお、これらの症例から切除した滑膜組織では、IFXの臨床症状抑制効果が不十分であったにもかかわらず、TNFαの発現はほぼ完全に抑制されていた。したがって、IFX効果不十分の発現機序は、TNFαとは別の機序によるものであることが示唆される。その機序の解明も、今後の課題として注目される。