動脈硬化性疾患の病態形成過程には、関節リウマチRA)と共通する炎症応答経路の関与が推測されている。WHO Collaborating CenterのSteffen Gay氏らは、RA患者への抗TNFα療法を推し進める中で、同療法が患者の血管内皮機能の改善をももたらすことを見出した。4月27日の国際シンポジウムで同氏は、自らのデータを含めた研究の最新動向を紹介し、抗TNFα療法による心血管疾患CVD)の改善・イベントの予防という新たな可能性について語った。

 RA患者は、同じ関節疾患である骨関節炎OA)患者に比べてCVDの発症リスクが高率であることが知られている。また、炎症マーカーであるCRPの亢進はCVDの強力な危険因子であることが数多くの研究によって示されている。これらは、CVDが炎症性疾患の一つであることを裏付ける事実にほかならない。だとすれば、前炎症性サイトカインであるTNFαを抑制するインフリキシマブ(IFX)の投与は、RA患者のCVDリスクに何らかの影響を及ぼす可能性がある。そこでGay氏らは、11例のRA患者(平均年齢46±5歳、平均罹病期間9±2年)にIFXを投与し、CVDリスクのsurrogate markerの一つである血管内皮機能への影響の有無を検討した。

 その結果、12週間のIFX治療により、疾患活動性(DAS28)と赤沈、CRP値の有意な低下とともに、血流依存性の血管拡張応答(FMD:内皮機能依存性の拡張)の著明な改善が認められた(3.2±0.4%→4.1±0.5%、p=0.018)。このとき、ニトログリセリン刺激に対する応答には有意な変化は認められなかったことから、IFX投与に伴う血管拡張能の改善は、内皮機能の改善を介したものと考えられた。

 TNFαにはまた、凝固系の主要な酵素である組織因子(TF)の産生誘導という作用もある。したがって、その抑制は、TFによるc-jun N-terminal kinase(JNK)経路の活性化を阻害し、トロンビン産生を抑制することによって抗血栓性を発揮し、心血管イベントの抑制をもたらすことが期待される。事実、RA活動性を補正すれば、女性RA患者における急性冠症候群(ACS)による死亡率は、抗TNF療法により低下を来すことが報告されているという(Jacobssonら、2006)。

 そこでGay氏らは、ACSのリスクの新たなマーカーであるミエロイド関連蛋白(MRP)8/14複合体を用いて、抗TNFα療法がACSリスクに与える影響の詳細を検討中だ。MRP8/14複合体は、安定狭心症例でも亢進を示すCRPとは異なり、不安定プラークを有する症例のみで亢進を呈することが特徴であり、より鋭敏なACSリスクマーカーとして期待されている。今後の研究の進展が待たれるところである。