埼玉医科大学総合医療センターの竹内勤氏

 種々の炎症性疾患の病態に関わるサイトカインであるTNFαを治療ターゲットとしたインフリキシマブIFX)には、以前から関節リウマチRA)治療薬の範囲にとどまらない多彩な効果が期待されていた。本剤は既にクローン病にも適応を有するが、さらに本年1月、ベーチェット病による網膜ぶどう膜炎が新たな適応として追加された。埼玉医科大学総合医療センターの竹内勤氏は第51回日本リウマチ学会で4月26日、世界に先駆けた承認の原動力となったわが国の臨床試験成績を紹介。また、IFXの弱点とされる効果減弱への取り組みについても併せて紹介し、IFXの新たな可能性への期待を綴った。

 ベーチェット病は、わが国を再多発国とする全身性炎症性疾患であり、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、眼症状、皮膚症状、外陰部潰瘍の4つを主症状とする。ベーチェット病は原因不明の難病であるが、これまでの検討からその病態形成にはTNFαが重要な役割を演じていることが示唆されている。同疾患に対する第3相試験には、網膜ぶどう膜炎の活動性病変を有する患者12例が参加。0、2、6週にIFXを点滴静注のうえ、14週間の追跡がなされた。その結果、主要評価項目である眼発作※ 回数は、平均10.2回から0.7回へと有意に減少(p<0.001)し、7例(58.3%)では完全に消失をみた。また、副次評価項目である視力も多くの症例で上昇ないし不変であった。

 なお、IFXとエタネルセプトETN)は、どちらもTNFαの作用を抑制する生物学的製剤であるが、抗TNFα抗体であるIFXとTNFα受容体であるETNの作用様式は随所において異なる。例えば、IFXの半減期はメトトレキサートMTX)との併用時で8〜10日であるのに対し、ETNの半減期はMTX併用の有無にかかわらず4.2日と短い。また、IFXには補体結合性細胞傷害性など、抗体ならではのメカニズムもある。竹内氏は、「作用機序の違いが有効となる疾患の違いに影響している可能性がある」との見解を示した。

 一方、RAに対するIFXの有効性は、投与22週目では92%(主治医判断)と良好なものの、以後効果の持続が保たれない症例も一部ながら存在することが報告されている。減弱の機序としては、網内系などのFcγRを介した抗体クリアランスの亢進や抗IFX抗体の生成などが考えられる。これらのためにIFXの半減期が短縮され、次回のIFX投与までに有効血中濃度が維持できない可能性が強いという。

 しかし、日本における現在の用法・用量では、IFXの増量や投与間隔の短縮はできない。そこで竹内氏が考案した対策は、IFX血中濃度が有効濃度を下回る直前に、ステロイドをワンショット静注するというものだ。つまり、ステロイドの免疫抑制効果により、次のIFX投与までの間、抗IFX抗体の形成を抑制しようというわけである。事実、同氏らの検討では、この方法を試みた患者の約半数において、再び疾患活動性の低下が得られている。同氏らの提案は、高いポテンシャルをもつIFXという薬剤を、本邦でも最大限に活かす妙案と思われる。


眼発作眼底検査により、前眼部の炎症(前房中細胞数の増加、前房中フレア)、硝子体混濁あるいは眼底の炎症(浮腫、滲出斑、出血、血管白鞘化)が認められた場合。