東京医科歯科大学の針谷正祥氏

 上市から2年になるTNF受容体・Fc融合蛋白製剤エタネルセプトETN)の全例市販後調査PMS)の最新集計結果が4月26日、第51回日本リウマチ学会のシンポジウムで報告された。投与24週後のGood responseが28.9%という優れた効果が確認されているETNだが、東京医科歯科大学の針谷正祥氏は、今回の報告では副作用の発現頻度とその予測因子に関する解析結果を中心に紹介し、同剤の適切な使用方法について考察した。

 わが国のETN使用患者数は1万3000人以上にのぼる。このうち、PMSでは7091例が解析対象とされた。患者の平均年齢は58.3歳、女性の比率は81.0%、関節リウマチRA)平均罹病期間は9.8年であり、高疾患活動性の患者が74.3%を占めた。抗TNFα抗体薬インフリキシマブIFX)のPMSデータとは異なり、ETNの使用者は大半が外来患者であることが両剤のPMS患者の最も異なる点であったが、RAのクラス分類、ステージ分類などはETNのPMS患者とIFXのPMS患者で全く差が認められなかった。

 これらの患者におけるETN使用後24週間の副作用発現頻度は30.64%、重篤な副作用の発現頻度は5.68%であった。ETNより前に実施されたIFXのPMSでは、副作用発現頻度は28.0%であったことから、ETNは我が国における使用実態下で、IFXと同等の安全性が示されたことになる。副作用の発現時期は投与開始から数週間以内の早期に多く、次第に減少する傾向がうかがわれた。しかし、重篤な副作用に関しては、時期にかかわらず追跡期間中コンスタントに0.5%程度の発現が認められ、継続的な注意が必要であることが示唆された。

 副作用の種類は感染症が約10%と最も多く、なかでも肺炎(1.4%)が高頻度であった。針谷氏らが肺炎の発症と相関する背景因子の検索を試みたところ、高齢および既存の肺疾患、ステロイド薬の併用の各因子が有意な予測因子として浮上した。一方、メトトレキサートMTX)の併用の有無は、肺炎と有意な相関を示さなかった。

 なお、MTX併用が併用された患者と併用されなかった患者では、患者の病態や背景因子が異なるため、単純に併用者と非併用者の肺炎発現率を比較することが困難であると考えられた。そこで、propensity解析と呼ばれる手法により、「MTXが併用されない可能性の高さ」に応じて患者を5群に分け、併用されない可能性の高い患者同士、あるいは併用されない可能性の低い患者同士で、実際のMTX併用の有無による感染症への影響が検討された。

 その結果、前述のように実際のMTX併用の有無は感染症発現と相関を示さなかったが、「MTXが併用されない可能性」が高い患者ほど肺炎発現頻度が有意に上昇することが明らかになった。すなわち、ETN使用時の感染症や肺炎発現は、MTX併用の有無によらず同程度のリスクがあり、ETN使用時に肺炎リスクが高くなる患者は、背景因子などから総合的に「MTXが併用されない可能性が高い」患者であった。針谷氏は、「年齢や肺疾患の既往、ステロイド使用歴に加え、様々な患者背景からMTXを併用しないと判断した経緯にも十分配慮し、このようなリスクの高い患者では副作用に注意すべきである」と述べた。