座長から代表として感謝状を手渡された水野氏。

 「心の病」という異色のセッションが4月27日、第51回日本リウマチ学会で開催された。今期会長を務める龍順之助氏の肝いり企画の一つで、東邦大学精神神経医学の水野雅文氏、中部労災病院心療内科の芦原睦氏、JA長野厚生連安芸総合病院整形外科の谷川浩隆氏の3人の専門家が講演。演者らは異口同音に、整形外科医に求められる心身医学的アプローチの重要性を訴えた。

 最初に登壇したのは水野氏。「自己免疫疾患と心の病」と題して、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、中枢神経性(CNS)ループスなどを取り上げ、患者の心の病の特徴と対応について総論を展開した。

 例えば関節リウマチでは、精神症状が21%に見られ、そのうちうつ状態が12.5%、残りが不安状態であることを紹介。原因として中枢神経症状、疾患そのものや治療の二次的な影響、精神疾患の合併があるとし、特に「慢性疾患に対する情動反応」がある点を強調した。関節リウマチに伴う精神症状で最も多いのは、関節リウマチを罹患したことに対する心因反応であるが、この点については「どの疾患でも起こりうるもので、慢性疼痛を持つ患者の心性への深い理解が求められる」(水野氏)と力説した。

 治療面では、抗不安薬や抗うつ薬の処方に加えて「支持的な精神療法が重要になる」(水野氏)とし、精神神経科との連携の重要性にも触れた。一方で、ステロイドの長期使用がうつ状態、そう状態、せん妄状態といったごく軽度の意識障害をきたすこともあるため十分な注意が必要とも付け加えた。

「全人的医療」の必要性を訴える芦原氏。

 次に登壇したのは芦原氏。内科学を基軸にリウマチ・膠原病学、さらに心身医学を学んだ芦原氏は、「リウマチ・膠原病領域の心身医療」のテーマで、膠原病に対する心身医学的治療の実際を解説した。

 関節リウマチのうつ状態の研究から、関節リウマチ患者はうつ状態を合併しやすく、ステージの進行とともに不安やうつ状態が軽減することなどが明らかになっていると指摘。うつ状態を疑うポイントを、(1)身体学的所見から説明できない訴えがある、(2)鎮痛剤が奏効しない持続的な疼痛がある、(3)睡眠剤の内服でも改善しない不眠を有する、(4)関節リウマチとは関係のない不定愁訴が持続する−−の4つに集約した。

 心身医学の専門医であり、リウマチ学会専門医でもある芦原氏は、「疼痛にまつわる愁訴を有する患者では、ストレスや心理的要因が密接に関与している」と指摘。心療内科的な対応が有効である場合が少なくないと強調した。その上で、リウマチ・膠原病領域では今後、不安やうつ状態などを合併している患者が増えるとし、一般診療科を訪れるこうした患者に対しての「全人的医療」(芦原氏)の必要性を訴えて、発表を締めくくった。

整形外科での心身医学的方法論の確立を訴えた谷川氏。

 最後に発表した谷川氏は、「運動器疼痛に対する心療整形外科的アプローチ」と題して、自らの実践例を交えて講演した。

 谷川氏はまず、受診した患者の反応が、精神科と整形外科の場合で違うことを紹介。腰痛の原因が心理的なものであると推察された症例について心理学的な問診を行ったところ、精神科の診察室の時は、問診がきっかけで痛みの心理的原因が明らかになり治療がスムーズになったが、整形外科の診察室の時は、「整形外科の医師になぜ家族のことを聞かれるのか」と拒否的な反応が返ってきたという事例があることを披露した。

 つまり、谷川氏によると、整形外科を受診する患者には、(1)心理的原因への気づきができない(ことさら気づきを拒絶している)、(2)心理的原因についての訴えには自ら触れない、(3)心理的な原因を探るための問診に対して、拒否的である(時には医師に対する不信感を露にする)、(4)身体的治療への期待感が非常に強い、(5)私的生活への言及は痛みに対するもののみ、(6)医師に対する人間的なかかわりへの期待度は低い(痛みだけを治してくれればいいという姿勢)などの特徴がある。一方で、治療する医師の側には、整形外科医は心理的治療の専門外であることが多い、という現状があるわけだ。

 では、心理的アプローチを敬遠しがちな患者に対して、整形外科医は何ができるのだろうか。谷川氏は、整形外科医という身体科医だからこそできる心身医療があると主張、さらに「整形外科医にしかできない心身医療がある」と続けた。その想いは発表演題にある「心療整形外科」という同氏の造語に凝縮されている。

 谷川氏は、整形外科にはおそらく多くの心身症患者がいると推察。「整形外科での心身医学的方法論の確立を急ぐべき」と結論付けた。