東京大学医学部22世紀医療センターの吉村典子氏

 わが国には、X線上の変形性膝関節症膝OA)が2400万人、腰椎OA が3500万人いると推測されることが、東京大学医学部22世紀医療センターの吉村典子氏らによる疫学調査で明らかになった。膝OAは男性よりも女性、都市部よりも山村部で多いこと、腰椎OAは逆に女性よりも男性、都市部よりも山村部で少ないことも分かり、OA発症には部位によって異なる要因が関与している可能性が示唆された。研究成果は、横浜で開催中の第51回日本リウマチ学会総会・学術集会の一般口演で4月26日に発表された。

 厚生労働省の2004年度国民生活調査によると、要介護となる原因の6.1%が関節症で第4位。要支援の原因としては関節症が17.5%を占め、疾病の中では最も多い。このため、高齢者のQOLを維持する上で、OAをはじめとする関節症の予防が重要な課題になるといわれている。

 しかし、わが国ではこれまで、OAを対象とした大規模な疫学調査がほとんど行われていなかった。そこで、吉村氏らは2005年に、一般住民を対象としたOAに関する大規模コホート(ROAD:Research on Osteoarthritis Against Disability)を、特性の異なる3地域(都市部として東京、和歌山県の山村部、同漁村部)で立ち上げた。

 ROADは、地域コホートと臨床コホートで構成される。前者は、約5000人の一般住民を10年間追跡して、OAの発生率、有病率、転帰・予後、危険因子などを検討するもの。臨床コホートは、疾病登録された患者を対象に追跡し、自然経過、増悪・改善率、影響因子、治療効果などを調べる。今回は、地域コホートで得られたこれまでのデータから、膝OA、腰椎OAの有病率やその地域差などを解析した。対象は、これまでに解析した3地域の住民計3040人のうち、50歳以上の2843人(男女比7:13、平均年齢72.3歳)。

 症状の有無は考慮せず、Kellgren-Lawrence(K/L)法により読影した両膝、胸椎X線写真で骨棘の明らかなK/L grade 2以上をOAと診断したところ、膝OAの有病率は男性44.6%、女性66.0%、腰椎OAは男性82.6%、女性67.4%と、膝OAは女性、腰椎OAは特に男性で多く認められることが分かった。

 有病率から、2004年の日本人の年齢別人口をもとに患者数を概算すると、わが国における膝OAは男性840万人、女性1560万人の計2400万人、腰椎OAは男性1850万人、女性1,660万人の計3510万人と推定された。

 地域別に検討すると、膝OAはいずれの地域でも男性よりも女性が多かったが、男女とも都市部に比べて山村部で多く、漁村部で少ない傾向が見られた。性差、地域特性を説明変数としてロジスティック回帰分析を行い、年齢で調整したOAのオッズ比を求めたところ、膝OAにおける女性のオッズ比は2.96、都市部に比べた山村部は2.55、漁村は0.84となり、女性と山村部で有意差が認められた。

 一方、腰椎OAは逆に、どの地域も女性より男性に多く、特に女性では山村部に少ない傾向であった。ロジスティック解析による腰椎OAのオッズ比は女性0.43、山村部0.78、漁村1.19となり、女性と山村部で有意差が認められた。

 膝OAは女性、山村部に多く、腰椎OAは男性に多く、山村部で少ないという結果が得られたわけだが、吉村氏は、生活上あるいは職業上のどんな因子がOAに関与しているかはこれから明らかにしていきたいとしていた。日本では、欧米に比べてOAが非常に多いとされるだけに、今後の調査結果が大いに待たれる。