関節リウマチ患者に対する人工膝関節置換術で、クリティカルパスの導入によって、医師を含むスタッフのスキルと患者の理解度が向上、バリアンス(パスからの逸脱)が83%から68%に減少した―。国立病院機構名古屋医療センター整形外科の佐藤智太郎氏らが、シンポジウム「関節リウマチの手術療法:適応ガイドラインと予後」の中で「当院の関節リウマチ患者に対する人工膝関節置換術(TKA)におけるクリティカルパスのバリアンス」と題して発表したもの。

 佐藤氏らは、2004年10月から2005年9月までの間に関節リウマチ患者に行った人工膝関節置換術(TKA)53人55関節、うち再置換4関節について、退院日をアウトカム(結果・目標)としてバリアンスを分析。標準退院日を術後21日目、退院基準は杖歩行が可能で、膝関節の屈曲が90度以上、合併症の増悪がないこととした。

 その結果、バリアンスが生じたのは44人と83%を占めた。このうち、家族の都合や膝関節可動域の不良、術後せん妄で退院日が遅れ入院が延長するケースが25人と多かった。

 さらにパス使用開始から6カ月たった時点(2005年4月〜2006年1月)で、このパスが管理ツールとしてどれだけ有効であるかを調べるため、患者112人を対象に再度バリアンスの分析を行った。その結果、バリアンスが発生していたのは76人(68%)と、前回の分析結果に比べて発生率は減少した。これは「医師を含むスタッフのスキルと患者の理解度の向上による効果と考えられる」と佐藤氏は説明し、パスの導入が医療の質の管理ツールとしての役割を果たしつつあることを示した。

 ただし、バリアンスの中では入院の延長など「負のバリアンス」が約6割を占める。これを解決するため、(1)膝関節可動域不良・歩行不安定に対する対応としては、リハビリテーションの重要性を患者に説明する、(2)術後せん妄に対しては、術後面会を行い患者に十分に説明する、とし、術前・術後オリエンテーションの充実やビデオ作成なども検討しているという。また、(3)家族の状況により在宅や転院が難しく入院が延長したケースに対しては、今後、早い段階からメディカルソーシャルワーカーに依頼したり、家族に入院時から退院準備を行うよう依頼すると話していた。