自治医科大学循環器内科の齋藤俊信氏

 基本的な末梢血球検査の1項目で貧血の診断時などに用いられる平均赤血球容積(MCV)が、安定冠動脈疾患患者における急性心筋梗塞(AMI)発症の予測因子になるという。自治医科大学循環器内科の齋藤俊信氏らが、9月23〜25日まで開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で発表した。

 心不全患者において貧血は、心血管イベントの予測因子になることが知られている。そこで齋藤氏らは、安定冠動脈疾患患者でも貧血が心血管イベントの予測因子になる可能性があるとの仮説を立て、今回の検討を行った。

 対象は、血行再建に成功した安定冠動脈疾患患者、連続803例(男性658例、女性145例、年齢64.4±9.7歳)。血液疾患や免疫異常の合併、急性冠症候群、3カ月以内の心血管イベントの既往がある患者は除外した。

 観察開始時の体重指数(BMI)は、平均24.2 kg/m2。合併する心血管リスク因子は、高血圧75%、脂質異常症66%、糖尿病43%、喫煙37%、冠動脈疾患の家族歴21%、陳旧性心筋梗塞37%などだった。

 末梢血球検査値は、赤血球(RBC)428万/μL、ヘモグロビン(Hb)13.5g/dL、ヘマトクリット(Ht)40%、MCV 93.8 fL、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)31.5pg、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)33.6%、血小板数(Plt)22.6万/μLなどで、高感度CRP(hs-CRP)は3097ng/mL、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)は1317pg/mLだった。

 平均774日のフォローアップ期間中に発生した主要心血管イベント(MACE:心不全、冠動脈再血行再建、AMI、致死的不整脈、脳卒中、突然死と定義)は、105例(13%)だった。内訳は、冠動脈再血行再建43例(41%)、心不全30例(29%)、AMI 14例(13%)、脳卒中8例(8%)、突然死7例(7%)、致死的不整脈3例(3%)だった。

 まず、赤血球の量的指標であるRBC、Hb、Htをそれぞれ四分位して(低値からQ1、Q2、Q3、Q4)MACE発生との関連を見たところ、HbとHtに関してはQ1でMACE発生率が非常に高く、Q1とQ2〜Q4との間で有意差が認められた(Hb:p=0.001、Ht:p=0.002)。一方、RBCは4群間に有意差はなかった。

 次に、赤血球の質的異常に着目し、MCV、MCH、MCHCの各四分位とMACE発生との関連を見た。その結果、MCHとMCHCでは4群間に有意差はなかったが、MCVではQ1において、Q2およびQ3に比べて有意に高値を示していた(p=0.037)。個々のイベントにおいて、MCVの四分位と有意な関連が認められたのはAMIだけだった。

 MACEを従属変数、各指標(年齢、BMI、Plt、HbA1c、推算糸球体濾過量[eGFR]、GOT、HDL、MCV)を説明変数として、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を行うと、MCVだけが有意な予測因子となった。

 以上より齋藤氏は、「MCVは安定冠動脈疾患患者において、AMI発症を予測する臨床上重要な予測因子となり得る」と結論した。MCVとAMIの関係について詳細は不明としたが、鉄欠乏性貧血などの小球性貧血でMCVが低値となること、また血清中への鉄移送を抑制するヘプシジンが慢性炎症で増加することから、「慢性炎症に伴う鉄欠乏性貧血が関与している可能性がある」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)