京都第二赤十字病院循環器科の井上啓司氏

 左室収縮能が保持された心不全症例でも、血漿アルドステロンALD)値は長期予後を予測するバイオマーカーとして有望なことが明らかになった。9月23〜25日まで開催されていた第59回日本心臓病学会JCC2011)で、京都第二赤十字病院循環器科の井上啓司氏らが発表した。

 欧米では、収縮能が低下した心不全症例において血漿ALD値は独立した予後予測因子と見なされており、抗ALD薬が心不全患者の長期予後を改善することも報告されている。しかし、左室収縮能が保持された心不全症例におけるALDの臨床的意義は確立しておらず、そうした症例における治療法も確立されていない。

 そこで井上氏らは、左室駆出率50%以上の心不全症例359例(男性222例、女性137例)を対象に、長期予後と血漿ALD値の関連を検討した。対象の平均年齢は74.6±10.6歳で、虚血性心疾患の合併例が179例を占めた。NYHAの心機能分類では、II度340例、III度16例、IV度3例だった。また、162例が心房細動(AF)を合併していた。

 検討では、病態の安定を確認した上で、内服薬投与下・安静時に血漿ALD値を測定、全症例の中央値によりALD低値群(95.0pg/mL未満、179例)とALD高値群(95.0pg/mL以上、180例)に分けて長期予後を追跡した。平均追跡期間は1117日。1次エンドポイントは心臓死と総死亡、2次エンドポイントは脳卒中と入院を要する心不全増悪とした。

 ベースラインの患者背景では、AF合併率(低値群37.9% vs. 高値群52.8%、p<0.0043)および心エコーから算出した左房径(低値群40.6mm vs. 高値群42.7mm、p<0.0121)に有意差を認めたが、その他の指標には有意差を認めなかった。

 1次エンドポイントの心臓死は全体で33例(9.2%)発生した。Kaplan-Meier法による心臓死の発生率は、ALD高値群がALD低値群よりも有意に高かった(Logrank Test p=0.0003)。もう1つの1次エンドポイントである総死亡(71例、19.8%、Logrank Test p=0.0320)、また2次エンドポイントである脳卒中(23例、6.4%、Logrank Test p=0.0124)と心不全入院(62例、17.3%、Logrank Test p=0.0407)も、ALD高値群の方が有意に高率だった。

 Cox比例ハザードモデルによる多変量解析(年齢、性別、体重指数[BMI]、左室駆出率、脳性ナトリウム利尿ペプチド[BNP]、推算糸球体濾過量[eGFR]で補正)では、ALD低値群に対するALD高値群のハザード比が、心臓死で3.513(95%信頼区間:1.545-7.990、p=0.0027)、総死亡で1.688(1.027-2.775、p=0.0391)、脳卒中で3.169(1.229-8.168、p=0.0170)、心不全入院で1.704(1.014-2.866、p=0.0443)となり、いずれの項目でも血漿ALD高値が独立した予測因子であることが示唆された。

 以上の結果を踏まえ、井上氏は「各症例における血漿ALD高値の原因の探索や、ALD受容体の評価などは行っておらず、投薬下の測定という問題点もあるが、血漿ALD値のバイオマーカーとしての有用性は再確認できたのではないか。少なくとも、抗ALD薬は収縮能を保持した心不全症例においても、長期予後を改善すると考えられる」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)