東京都立広尾病院循環器科の小宮山浩大氏

 心臓カテーテル検査・治療における造影剤腎症(CIN)の発症を予防する上で、重炭酸急速飽和療法は通常補液療法や重炭酸持続療法と比較して効果があることが示された。東京都立広尾病院循環器科の小宮山浩大氏らが、9月23〜25日に開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で発表した。

 ヨード造影剤はCINを引き起こすことがあり、CINを発症すると患者の予後は著しく低下する。しかし現時点では、腎毒性のないヨード造影剤はない。CINの発症率は、冠動脈造影(CAG)や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の場合は0%から10%程度だが、腎機能障害を有すると25%程度に高まるといわれている。最近、重炭酸の急速飽和療法がCIN発症予防に効果的であると報告されたが、重炭酸の持続療法と直接比較した成績はない。そこで小宮山氏らは、通常補液療法、重炭酸持続療法、重炭酸急速飽和療法の有効性を前向きに検討した。

 対象は、東京都立広尾病院でCAG、PCIを実施する予定の患者のうち、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2未満の患者150例。これらの患者を、通常補液療法群、重炭酸持続療法群、重炭酸急速飽和療法群の3群に無作為に50例ずつ割り付けた。3群間の患者背景に有意差はなかった。なお、20歳未満、妊娠例、透析施行例、急性心筋梗塞例、不安定狭心症例、重症呼吸器疾患合併例、48時間以内の造影剤使用例は除外した。

 通常補液群では、通常補液として0.9%生理食塩水を術前と術中に80mL/時で使用し、術後150mL/時へ増速した。合計1500〜2000mLの生理食塩水を投与した。重炭酸持続群では、重炭酸を施術1時間前から3mEq/mL/kgで投与し、術中から1mEq/mL/kgに減速し施術6時間後まで継続した。重炭酸は、5%グルコース460mLに8.4%炭酸水素ナトリウム40mLを加えたものとした。重炭酸急速飽和群では、施術直前に重炭酸20mEq/mL/kgを急速飽和するとともに、処置前後に生理食塩水1500〜2000mLを補液した。

 CINの定義としては、造影剤使用後48時間以内に血清クレアチニンが投与前値と比べて0.5mg/dL以上の増加、もしくは25%以上の増加のいずれかが見られた場合とした。その結果、CINの発症率は、通常補液群で28%(14例)、重炭酸持続群で16%(8例)、重炭酸急速飽和群で6%(3例)だった。重炭酸急速飽和群は、通常補液群、重炭酸持続群のいずれに対しても有意に低かった(順にp<0.001、p<0.05)。また重炭酸持続群は、通常補液群より発症率が低い傾向が見られ(p=0.150)、総補液量は他の2群より有意に少なかった(p<0.001)。

 これらの結果から小宮山氏は、「重炭酸急速飽和療法は、心臓カテーテル検査・治療におけるCIN発症を予防する上で、有効な方法だ。また、重炭酸持続療法は通常補液療法よりもCIN発症率が低い傾向にあり、総補液量が他の方法に比べ有意に少ないため、心機能が低く水分負荷を少なくしたい患者に対して有用である可能性が示唆された」と語った。さらに、「腎機能障害を有する患者だと造影剤を使用する心臓カテーテル検査や治療はためらいがちだが、そうした患者はむしろ動脈硬化が進んでおり、狭心症や心筋梗塞の発症率は高いので、CAGやPCIを施行するメリットは大きい」と付け加えた。

(日経メディカル別冊編集)