伊勢崎市民病院循環器内科の佐野宏和氏

 マスク式人工呼吸器を用いたadaptive servo ventilation(ASV)は、心不全のリスク因子である中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の有効な治療手段として注目されている。このASVは、収縮障害・拡張障害のどちらに対しても有効であることが分かった。9月23〜25日に開催されていた第59回日本心臓病学会で、伊勢崎市民病院循環器内科の佐野宏和氏、高間典明氏らが報告した。

 心不全患者の2〜4割に合併するとされるCSAは、心不全の発症や予後に大きな影響を及ぼすことが知られている。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対しては従来より持続性陽圧換気(CPAP)が広く行われているが、CSAが優位な心不全患者では予後改善効果は確認されていない。このため、新しい治療法であるASVに期待が寄せられている。

 ASVでは呼吸気の流速をモニターし、減衰を感知すると、自動的かつ速やかに吸気時気道陽圧を高め、目標換気量を維持する。CSAへの有効性だけでなく、心不全患者の心機能やQOLに対する改善効果も認められている。予後への影響については、欧州でランダム化比較試験が進められている。CPAPとの比較では、短期的には、無呼吸低呼吸指数(AHI)、左室駆出率(EF)、QOLの改善効果でASVが勝ることが報告されている。

 CSAなどの睡眠時呼吸障害はさまざまなメカニズムを介して、左室の収縮障害や拡張障害を惹起し、その結果として心不全の発症・悪化に至る。一般に、慢性心不全の中でEFが保たれている心不全、すなわち拡張障害は30〜50%とされる。収縮障害と拡張障害で、その予後には大きな違いはないが、拡張障害は治療抵抗性である場合が多い。ガイドラインで推奨度Class Iに属する治療薬は利尿薬のみで、治療方針はいまだ確立されていない。

 佐野氏らは今回、心不全患者を収縮障害(EF<30%)と拡張障害(EF>50%)に分け、それぞれに対するASVの有効性を検討した。

 対象は、既に十分な薬物療法が行われているNYHA II〜IVの心不全患者47例(男性28例、女性19例、年齢69±12歳)。47例の内訳は、26例が収縮障害、21例が拡張障害だった。両群の年齢、男女比、体重指数(BMI)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値、AHIなどに、有意差はなかった。基礎疾患は虚血性心疾患、拡張型心筋症、肥大型心筋症が多かった。

 ASV治療を1〜3カ月間行いBNP値の推移を見たところ、収縮障害群では治療前の659pg/mLが339pg/mLへ(p<0.0005)、拡張障害群でも424pg/mLから328pg/mLへ(p<0.05)、それぞれ有意に改善していた。またAHIも、収縮障害群で45.0/時から18.7/時へ(p<0.0001)、拡張障害群で38.1/時から10.5/時へ(p<0.001)、有意に改善していた。

 これらの成績から佐野氏は、「心不全症例では、収縮障害・拡張障害の違いにかかわらず、ASV治療が有用であることが示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集部)