社会保険小倉記念病院循環器科の渡部宏俊氏

 サッカー元日本代表の松田直樹選手が、34歳の若さで急性心筋梗塞により死亡したのは記憶に新しい。このような若年発症の心筋梗塞が最近増えているとよく言われるが、十分検証されていない。社会保険小倉記念病院(北九州市)循環器科の渡部宏俊氏らは、40歳未満で発症した急性冠症候群(ACS)患者の背景因子を検討。40歳以上のACS患者に比べ、喫煙者の割合が高く、HDLコレステロール(HDL-C)値が低いといった違いがあったことを明らかにした。9月23〜25日まで開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で、同氏が報告した。

 渡部氏らは今回、40歳未満で発症したACS患者の患者背景を他の年齢層と比較するとともに、予後に関連する因子を検討した。対象は、1981年1月〜2008年12月の約30年間に小倉記念病院に入院して治療を受けたACS症例、計5692例(男性4119例、女性1573例)とした。

 これを発症年齢別に、40歳未満群(101例、1.78%、A群)、40〜59歳群(1511例、26.54%、B群)、60〜79歳群(3275例、57.53%、C群)、80歳以上群(805例、14.14%、D群)の4群に分類した。

 最も若いA群と他の3群で患者背景を比較すると、A群では男性比率、喫煙率、脂質異常症の合併率が高く、高血圧合併率、推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2未満である比率が低かった。また、来院時にショック状態だった患者は少なかったが、IABPやPCPSなど補助循環の使用率は高い傾向を示した。心房粗動、心房細動も多い傾向にあった。

 HbA1c値は高齢の群ほど低い傾向にあった。血清総コレステロール値はA群では189.0mg/dLで、D群に比べて有意に高く、C群よりも高い傾向にあった。トリグリセリド値もA群は136.5mg/dLでC群に比べて有意に高く、B群およびD群よりも高い傾向を示した。

 HDL-C値は若年の群ほど低く、A群は40.3mg/dLで、B群およびC群との間に有意差を認めた。LDLコレステロール値は若年群ほど高く、A群は123.3mg/dLで、D群との間に有意差を認めた。従ってLDL-C/HDL-C比は若年群ほど高く、A群は3.12で、C群との間に有意差を認めた。

 腎機能に関しては、クレアチニン値には4群間で有意差がなかったが、eGFRは年齢の若い群ほど高く、A群とC群の間で有意差が認められた。ヘモグロビン値も年齢の若い群ほど高く、A群とC群の間で有意差が認められた。

 院内死亡率はA群が他の年齢群に比べて低かった。この院内死亡に関与する因子をロジスティック回帰分析で検討すると、単変量解析では入院時eGFRが唯一有意な関連因子となったが、多変量解析では有意差が見られなかった。

 渡部氏は「40歳未満発症のACS患者は全症例の1〜2%程度と少ないものの存在し、その背景因子として喫煙(A群 78.21% 対 B群 61.74%、p=0.049)、HDL-C低値(A群 40.3mg/dL 対 B群 45.1mg/dL、p=0.003)が認められた」とまとめた。いずれも若年発症患者に特異的な背景因子ではなく、予防には従来のリスク因子の改善が重要であることが示唆された。

(日経メディカル別冊編集)