日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科の小杉宗範氏

 血液凝固因子であるフィブリノーゲンの高値が、冠攣縮性狭心症患者の独立した長期予後規定因子となる可能性が示唆された。9月23〜25日に開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で、日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科の小杉宗範氏らが発表した。

 近年、フィブリノーゲンは血管内膜の透過性亢進や単球の遊走促進だけでなく、血小板の活性化や炎症反応の惹起にも関与していることが明らかになってきた。また最近では、器質的冠動脈病変を有する症例で、フィブリノーゲンが心血管イベントの独立した危険因子であることが報告されている。

 そうしたなか小杉氏らは、フィブリノーゲンと冠攣縮性狭心症の関連を示す報告が少ないことに着目し、入院時フィブリノーゲン値が冠攣縮性狭心症患者の長期予後を規定する因子となっているかを検討した。

 対象は、抗狭心症薬(Ca拮抗薬や硝酸薬を含む)が投与されていない冠攣縮性狭心症患者662例。平均年齢は60±10歳だった。なお、冠攣縮性狭心症の診断後は、全例にCa拮抗薬が投与されている。

 心血管イベントは、心臓突然死および急性冠症候群(ACS)による再入院と定義した。ACSは、硝酸薬を舌下投与しても緩解しない胸痛発作があり、来院時の心電図検査でST低下を認めた場合とした。

 心血管イベントは、平均追跡期間6.9年で67例発生した。内訳は、心臓突然死が13例、ACSによる再入院が54例だった。両群の患者背景の比較では、心血管イベント発生群では高齢、収縮期血圧低値、心拍数高値を認め、喫煙率、高血圧・脂質異常症・不整脈の合併率も高かった(いずれも有意差あり)。一方、性別、体重指数(BMI)、拡張期血圧、糖尿病合併率、多肢攣縮率、左室駆出率には有意差は見られなかった。

 血液検査所見では、心血管イベント発生群は未発生群に比べ、白血球数、フィブリノーゲン、CRP、推算糸球体濾過量(eGFR)が有意に高値で、ヘモグロビン、HDL-コレステロール、トリグリセリドは有意に低値だった。血小板数、LDL-コレステロール、空腹時血糖、HbA1cは有意な差はなかった。

 受信者動作特性曲線(ROC曲線)による解析から、心血管イベント予測のためのフィブリノーゲンのカットオフ値は400mg/dLと算出された。フィブリノーゲン400mg/dL以上の群では心血管イベントは30.5%(43/141例)だったが、400mg/dL未満の群では4.6%(24/521例)と、有意に少なかった。Kaplan-Meier法による解析でも、400mg/dL以上群では心血管イベントの発生が有意に高率だった(Log Rank P<0.001)。

 また、対象症例の患者背景を多変量Cox回帰分析により解析したところ、高齢(60歳以上)、現在の喫煙、心機能低下(左室駆出率50%未満)、慢性腎臓病(eGFR 60mL/min/1.73m2未満)、CRP上昇(0.25mg/dL以上)以外に、フィブリノーゲン高値(400mg/dL以上)が独立した予後規定因子として抽出された。

 以上の結果を踏まえ小杉氏は、「フィブリノーゲン高値が、冠攣縮性狭心症患者の独立した長期予後規定因子となる可能性が示唆された。冠攣縮性狭心症の状態が個々の患者で異なることを踏まえ、より長期の観察を続けていきたい」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)