日本医科大学千葉北総病院集中治療部の北村光信氏

 近年、高感度トロポニンT(hs-cTnT)は急性心筋梗塞(AMI)の早期診断において高い診断能が注目されている。このたび日本でも5施設共同の前向き研究「HsTnT-iNET study」が行われ、発症2時間以降の症例では感度・陰性的中率ともに100%と高く、早期診断に極めて有用であることが示された。9月23〜25日に開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で、日本医科大学千葉北総病院集中治療部の北村光信氏らが報告した。

 本研究では、18歳以上の急性冠症候群(ACS)が疑われる患者で、(1)20分以上続く胸痛またはその他の虚血症状がある、(2)発症24時間以内、(3)本研究への参加同意が得られた――という条件を満たす患者を登録。各種心筋マーカーにおけるAMIの早期診断能について分析した。

 測定項目は、TnTとして迅速TnT定量検査、従来型cTnTおよびhs-cTnTの3種類と、ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)、CK-MB、ミオグロビン、NT-proBNPとした。

 2009年11月から2011年1月に、5施設(日本医科大学千葉北総病院、日本大学医学部附属板橋病院、東京医科大学病院、杏林大学医学部付属病院、帝京大学ちば総合医療センター)から113症例を登録。

 イベント発症あるいは病院搬入直後など、可能な限り早い時点で初回採血し上述の検査項目を測定(T0)。迅速TnT定量検査が0.1ng/mL未満の場合に、初回採血後180±20分(T3)、および6〜12時間(T6)にも採血して再度測定を行った。一方、T0における迅速TnT定量検査が0.1ng/mL以上の場合には、その後のマーカー測定のための採血は行わず治療を優先させた。

 解析対象は、登録した113症例中、(1)迅速TnT定量検査がT0で陽性(≧0.1ng/mL)23例、(2)従来型cTnT定量測定によりT0で0.10ng/mL以上だった4例、(3)T0〜T6の採血間でPCIを行った症例で正常上限の3倍を超えたType 4a MI(PCI related MI、universal definition 2007)疑い2例――を除外した84例とした。

 T0、T3、T6のいずれかで従来型cTnT定量測定値が0.03ng/mL超の場合をAMIと定義した場合、AMIが45例(54%)、非AMIは39例(46%)だった。非AMIの内訳は、不安定狭心症(UAP)18例、安定型狭心症(SAP)3例、その他18例だった。

 AMIの45症例について、心筋マーカー測定値と、発症から初回採血までの時間との関係を見ると、従来型cTnTでは検出限界の0.01ng/mL以下を示すものが数多く見られたが、hs-cTnTでは、ほとんどの症例で測定が可能となっていた。

 北村氏は注目すべき点として、「発症から120分以内の症例ではhs-cTnT陰性症例が認められるが、120分を超える症例では、全症例がカットオフ値の0.014ng/mLを超えている。これに対して他の心筋マーカーは発症時間にかかわらず、基準値以下のものが散見される」と、hs-cTnTの超急性期診断における利点を指摘した。

 実際の診断成績として感度は、2時間以下の症例に関しては、いずれの心筋マーカーも50%未満と低い値だった。2時間を超える症例に関しては、hs-cTnTは本研究では100%と極めて高く、陰性的中率も100%だった。他の心筋マーカーに関しては、特異度や陽性的中率は高いものの、感度は低かった。

 以上の成績から北村氏は、「高感度トロポニンTは、従来型と比べて早期にAMIを診断することが可能であり、発症から120分を超える症例ではAMI診断における感度・陰性的中率が100%と、極めて高かった。現在サブ解析として、冠動脈造影所見とこれらマーカーとの関連性を検討中だ」とまとめた。
 
(日経メディカル別冊編集)


【訂正】
2011年10月14日に以下を訂正しました。
・cTnT値の単位で、一部ng/dL表記がありましたが、正しくはng/mLでした。