大阪府済生会千里病院千里救命救急センター心血管内治療室の伊藤賀敏氏

 院外心停止例の社会復帰率を高める鍵の1つが、脳保護を目的としたpost cardiac arrest intervention(PCAI)の速やかな導入だ。その判断に必要な脳蘇生予測の新しい指標として、無侵襲で迅速に得られる脳局所酸素飽和度(rSO2)が有用なことが明らかになった。大阪府済生会千里病院千里救命救急センター心血管内治療室の伊藤賀敏氏らが、9月23〜25日に開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で発表した。

 近年、院外心停止例に対して、神経学的予後を考慮した心肺脳蘇生の考え方が重視されるようになった。実際に、病院到着後速やかに経皮的心肺補助装置(PCPS)などによるPCAIが行われ、それが神経学的予後の改善に結びついている。

 こうしたPCAIの導入を判断する際、脳蘇生の予測が必要になる。これまでは、採血してbase excess(BE)あるいはlactateが測定されてきたが、結果が出るまで時間がかかる上、特異度や陽性的中率が十分ではないとの指摘もあった。

 そこで伊藤氏らは、心臓外科や麻酔科の領域では10年ほど前から利用されているrSO2の導入を試みた。rSO2は前額部左右に貼り付けたセンサーパッドを介して、近赤外線により深さ2cm前後の前頭葉局所の酸素飽和度を測定する。簡便かつ迅速に行え、結果は測定開始後5〜10秒程度で得られるが、一般的には1分間ほど待って値を得る。心停止下でも測定することができる。

 伊藤氏らは今回、来院時心停止例におけるrSO2の脳蘇生予測能を検討した。対象は、2009年4月〜2010年4月の来院時心停止例153例から、外傷例(脳浮腫・血腫、気脳症などで測定不能)、小児例、DNAR(do not attempt resuscitation)例などを除いた82例。救急要請から病院到着までの平均時間は約40分。測定は全例、来院後3分以内に1回だけ行った。

 神経学的予後は、82例中13例が良好(CPCスコア1〜2)、69例が不良(CPCスコア3〜5)だった。rSO2値の平均は、良好群51.8%、不良群24.2%と、良好群で有意に高かった。

 受信者動作特性曲線(ROC)解析により得られたrSO2のカットオフ値は25%だった。神経学的予後が良好だった症例は全例でrSO2値が25%以上だった上、25%以下は全例、予後不良だった。rSO2の特異度、陽性的中率はともに100%で、同時に測定したBE、lactateに比べて明らかに優れていた。

 さらに、神経学的予後良好例の割合は、rSO2が25%以下で0%、26〜40%で22%、40%を超えると52%と、rSO2値に伴って段階的に有意な上昇が認められた(P<0.0001)。

 伊藤氏は「rSO2は心停止例のPCAI導入判断に役立つ可能性が示唆された」と述べるとともに、さらに多数例で検証するため、現在、全国26施設が参加する多施設共同研究J-POP(Japan-Prediction of neurological Outcome in Patients with cardiac arrest)レジストリーが進められていることを明らかにした。

(日経メディカル別冊編集)