広島市立安佐市民病院循環器内科の加藤雅也氏

 近年、上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)が糖尿病を合併した冠動脈疾患(CAD)患者の短期予後と相関することが報告されている。広島市立安佐市民病院循環器内科の加藤雅也氏らは、高血圧合併CAD患者を対象にbaPWVを指標とした検討を行った。その結果、さらに糖尿病を合併していると、腹部肥満を伴わない方がbaPWVは高値で、ハイリスク群であることを、9月23〜25日に開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)において報告した。

 対象は高血圧を合併したCAD患者342例で、冠動脈造影の施行から1週間以内にbaPWVを測定した。CADの内訳は急性心筋梗塞が193例、不安定狭心症が92例、陳旧性心筋梗塞が6例、安定労作性狭心症が48例、無症候性心筋虚血が3例であった。

 baPWV 1800cm/秒をカットオフ値として対象を2群に層別して、患者背景を比較検討したところ、1800cm/秒以上群は同未満の群に比べ、高齢で糖尿病合併率が有意に高かったが、BMI値、喫煙率、メタボリックシンドローム合併率は有意に低かった。多変量解析では、baPWV 1800cm/秒以上の独立した予測因子として、65歳以上、糖尿病合併が同定された。

 次に、糖尿病非合併群、糖尿病合併・腹部肥満なし群、糖尿病合併・腹部肥満あり群の3つに分けて見ると、腹部肥満なし群は非合併群に比べbaPWVが有意に高く(p<0.0001)、さらに腹部肥満あり群と比べても有意に高かった(p<0.04)。一方、非合併群と腹部肥満なし群の間には有意差がなかった。

 また、糖尿病と高血圧を合併したCAD患者において、baPWV 1800cm/秒以上の独立した正の予測因子として65歳以上が、負の予測因子として腹部肥満が同定された。

 以上の結果から加藤氏は、「糖尿病と高血圧を合併した腹部肥満がない高齢CAD患者はbaPWVが高値であったので、2次予防のために積極的な降圧治療が必要だ」との見解を示した。また、腹部肥満がなくてもbaPWVは高く、ハイリスクである可能性があるので、baPWVを測定してみる価値はあるのではないかと語った。なお、糖尿病で腹部肥満がない群の方がbaPWVは高かった理由の1つとして、糖尿病に長く罹病しており肥満度が下がった可能性を挙げた。

(日経メディカル別冊編集)