東京慈恵会医科大学循環器内科の小武海公明氏

 ここ数年、欧米を中心に報告が増えているobesity paradox。体格指数(BMI)が大きい方が予後は良いという、循環器領域などでの一般的な認識とは異なる現象だ。このobesity paradoxが日本人の心不全患者でも認められることを示唆するデータを、9月25日まで神戸市で開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で、東京慈恵会医科大学循環器内科の小武海公明氏らが報告した。

 obesity paradoxは、欧米の慢性心不全(CHF)や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者を対象とした検討から、各種の交絡因子を排除した場合でも認められている。さらに、冠動脈疾患や末梢動脈疾患で確認されたという報告もある。

 心不全との関連については、過体重または肥満の心不全患者における心血管イベントおよび総死亡が、正常体重の心不全患者よりも低率だったという結果がメタ解析から得られた。このような知見の増加に従い欧米では、「肥満がどんな場合も悪玉というわけではない」との認識が浸透しつつあるという。

 このobesity paradoxが、日本人でも認められるのか――。小武海氏らは今回、2007年4月〜2011年3月に心不全で慈恵医大病院に入院、軽快退院して外来で経過観察している心不全患者を対象に検討を行った。ただし、心筋梗塞に合併した心不全患者、入院時既に慢性維持透析を行っていた患者、経過観察中に慢性維持透析導入となった患者、経過観察中に心臓手術を行った患者は除外した。

 解析対象患者(219例)をBMIにより四分位し(Q1〜Q4)、CHFイベント(総死亡+心不全による入院)の発生を比較した。観察期間は平均452日。BMIは全体に欧米人と比べると低かったが、分布のピークは日本人の理想BMIとされる22 kg/m2よりは、やや高値だった。

 各群のBMIは、最も低いQ1(55例)が13.84〜21.40 kg/m2、Q2(55例)が21.41〜23.67 kg/m2、Q3(54例)が23.68〜26.93 kg/m2、Q4(55例)が26.94〜48.61 kg/m2だった。

 Kaplan-Meier法で得られたイベント回避率はQ1で最も低く、Q2、Q3、Q4という順で高くなり、有意差が認められた(P=0.0001)。

 イベント予測因子について単変量解析を行うと、BMIのほか、年齢、心不全による入院の既往、推算糸球体濾過量(eGFR)、血清ヘモグロビン値、血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が有意な因子となった。さらに、4群で有意差のあった背景因子(年齢、性、高血圧、糖尿病、入院時心房細動、血清ヘモグロビン値、血漿BNP値)を加えて多変量解析を行ったところ、BMIはここでも有意なイベント予測因子として残った。Q1に対するQ4のイベントハザード比は0.391だった。

 小武海氏は「心不全の予後に影響を与える因子や、各分位によって異なる因子で補正しても、BMIの高い方がCHFイベントは少なかった。このことから、obesity paradoxは日本人心不全患者においても存在すると考えられた」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)