東北大学循環器内科学の後岡広太郎氏

 健康な成人を対象としたエゼチミブスタチンによるクロスオーバー試験の結果、エゼチミブはコレステロール吸収阻害により抗動脈硬化作用を有することが示唆された。またエゼチミブは、コレステロールの吸収阻害によりRhoキナーゼ活性を抑制すると考えられた。この成果は、9月23日から25日まで神戸市で開催された日本心臓病学会JCC2011)で東北大学循環器内科学の後岡広太郎氏が報告した。

 回腸バイパス術を受けた患者では、総コレステロール(TC)の低下とともに、心血管イベントの発生が35%減少することがPOSCH試験によって示されている。この事実は、腸管からのコレステロール吸収阻害が動脈硬化の抑制に働く可能性を示唆している。一方で、コレステロール吸収を阻害するエゼチミブが動脈硬化進展の過程に関与するかどうかについては、ENHANCE試験の結果から疑問が呈されていた。そこで後岡氏らは、エゼチミブの抗動脈硬化作用を評価すべく、エゼチミブとスタチンによるクロスオーバー試験を行った。

 対象は、健康な成人20人(平均年齢31歳、男性14人)。試験参加者を無作為に2群に割り付け、エゼチミブ10mg/日およびプラバスタチン10mg/日を4週間投与し、wash-out後に両群をクロスオーバーし同様の投与を行った。解析が可能だった19人について、各薬剤の投与前後の脂質代謝、コレステロール吸収・合成マーカーに加え、血管内皮機能の障害や動脈硬化に関与する好中球Rhoキナーゼ活性、血管内皮機能の指標である血流依存性血管拡張反応(FMD)の変化を比較検討した。

 その結果、LDL-コレステロール(LDL-C)は、エゼチミブ、プラバスタチンとも投与前より有意に低下し、両群間の有意差は認められなかった(25% vs. 21%、p=0.09)。

 一方、FMDはエゼチミブ投与後に有意に改善した(6.8% → 7.7%、p=0.04)。また、Rhoキナーゼ活性も有意に低下した(p=0.037)。これに対し、プラバスタチン投与後のFMDやRhoキナーゼ活性には有意な変化は認められなかった。

 レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)は、エゼチミブ投与後の方がプラバスタチン投与後よりも有意に低下した(ベースラインからの変化率:−33.3% vs. −14.2、p=0.014)。

 さらに、小腸におけるコレステロール吸収と肝臓におけるコレステロール合成のバランスの指標となるコレスタノール(吸収マーカー)/ラソステロール(合成マーカー)比を調べたところ、コレステロール吸収を阻害するエゼチミブ投与により有意に低下した(0.9 → 0.6、p=0.0001)。これに対し、コレステロール合成を阻害するプラバスタチンの投与後では有意に上昇した(1.1 → 1.3、p=0.017)。

 さらに、コレスタノールとFMDの間には、有意な負の相関が認められ、小腸からのコレステロール吸収阻害が血管内皮機能を改善させることが示唆された(r=-0.49、p=0.002)。

 以上の結果より後岡氏は、「今回の検討は健康な成人を対象としたものではあるが、エゼチミブはコレステロール吸収阻害による抗動脈硬化作用を有すると考えられる」と結論。コレステロール吸収・合成マーカー比が上昇し、コレステロール吸収が亢進しているような症例、具体的には肥満、メタボリックシンドロームを合併する高コレステロール血症において、エゼチミブが有用ではないか」と指摘した。そして「エゼチミブはコレステロール吸収阻害によりRhoキナーゼ活性を抑制したと考えられるが、機序に関しては更なる検討が必要だ」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)