金沢大学循環器内科の川尻剛照氏

 スタチン投与は、心血管イベントの強力な抑制効果をもたらすが、未だ単剤では克服できない課題が残存しているのも現状だ。スタチン単剤に比べ、スタチンと異なる作用機序を持つエゼチミブコレスチミド、あるいはフィブラートの併用は、さらなる脂質プロファイルの改善に貢献し、動脈硬化の抑制に効果的であることを、9月23日から25日まで神戸市で開催された日本心臓病学会JCC2011)において金沢大学循環器内科の川尻剛照氏が報告した。

 スタチン投与によって肝臓内のコレステロールプールが減少すると、そのシグナルを感知した肝細胞内の転写因子SREBP2の活性化が起こり、LDL受容体の発現が亢進する。その結果、血中からのLDL-Cの取り込みが促進され、強力なLDL-C低下作用がもたらされる。一方で、この転写因子SREBP2の活性化を介してLDL受容体の分解を促進するPCSK9の合成も亢進することが分かっている。つまり、スタチンはLDL受容体の発現を増加させる一方で、受容体を壊す分子も増加させるというわけだ。

エゼチミブとコレスチミドの上乗せはPCSK9値に影響を及ぼさず
 川尻氏らはまず、スタチンとエゼチミブ、コレスチミドの併用療法について検討した。

 LDL受容体遺伝子のヘテロ接合体異常による家族性高コレステロール血症患者17人を無作為に2群に分け、両群ともにロスバスタチン5mg/日で治療を開始、4週後にロスバスタチンを通常用量の10mg/日に増量した。

 8週時点で、一方の群(n=8、併用群)にエゼチミブ10mg/日を追加、もう一方の群(n=9、増量群)はロスバスタチンを20mg/日に増量し、両群の血清脂質とPCSK9発現について比較検討した。

 その結果、両群ともに総コレステロール(TC)とLDL-Cの有意な低下を認めたが(ともにp<0.001)、LDL-Cの低下率は併用群の方が有意に大きかった(61.1% vs. 54.1%、p<0.05)。HDL-Cは併用群のみで有意に増加した(17.9%、p=0.013)。一方、PCSK9発現率については両群ともに有意な上昇を認めたが、増量群(77.5%、p<0.0001)よりも併用群(51.7%、p=0.02)の方が増加の割合が小さかった。

 16週時点で、増量群にエゼチミブ10mg/日を追加してもPCSK9発現率に有意な変化は認められなかったが、併用群のロスバスタチンを20mg/日に増量したところ、PCSK9発現率の有意な上昇が見られた(51.7% → 75.2%、p=0.004)。

 24週時点で、両群ともにコレスチミド3.26g/日を追加したところ、併用群のみLDL-Cが有意に低下したが(p=0.02)、PCSK9発現量への影響は両群とも有意差を認めなかった。

 これらの結果より、スタチン最大量に比べ、スタチン通常用量とエゼチミブ併用は、有意にLDL-C/HDL-C比を低下させること、スタチン投与により血中PCSK9値が上昇すること、エゼチミブおよびコレスミドのスタチンへの上乗せはPCSK9値に影響を及ぼすことなくLDL-C値を低下させることが明らかになった。

スタチンとフィブラートのリポ蛋白代謝に及ぼす影響は相補的
 続いて川尻氏らは、レムナント上昇を特徴とするIII型高脂血症患者に対するスタチンとフィブラート併用療法の有効性を検討した。

 スタチンの主なターゲットはLDL-C、フィブラートのターゲットはVLDLやカイロミクロンだ。そこで両薬剤がリポ蛋白代謝に及ぼす影響を調べるために、III型高脂血症患者6人を2群に分け、アトルバスタチン10mg/日またはベザフィブラート400mg/日のオープンクロスオーバー試験を行い、治療前後のリポ蛋白分画の変化を検討した。

 その結果、アトルバスタチンはすべてのアポB含有リポ蛋白分画を低下させたが、HDL分画はほとんど変わらなかった。一方、ベザフィブラートは小さな粒子径のLDLを減少させると同時に大きな粒子径のLDLを増やし、HDL分画も増加させた。このように2剤はリポ蛋白代謝に及ぼす影響が大きく異なることが示された。

 そこで川尻氏らは、6人のIII型高脂血症患者のうち、スタチンとフィブラートの併用が禁忌とならない4人の患者に対し、両剤の併用投与を試みた。すると、両剤の併用は、単剤投与に比べ、TCとTGの低下、HDL-Cの増加をもたらすことが示され、両剤は相補的に脂質プロファイルを改善することが明らかになった。

 川尻氏は、上記2つの試験結果を総括して、「スタチン単剤に比べ、異なる作用を有する脂質異常症治療薬の併用は、動脈硬化を抑制する脂質プロファイルに貢献する可能性が高い。中でもPCSK9阻害効果の期待できる薬剤の併用が有用と考えられる」と語った。

(日経メディカル別冊編集)