広島大学循環器内科学の卜部洋司氏

 冠動脈石灰化スコアの上昇に伴って冠動脈疾患の罹患率は高まったが、非石灰化プラークの脆弱性と石灰化スコアの間には、このような直線的な関連は見られず、石灰化スコアが中等度の群で脆弱性所見が最も多かったという。広島大学循環器内科学の卜部洋司氏らが、9月23日から25日まで神戸市で開催されていた第59回日本心臓病学会(JCC2011)で発表した。

 冠動脈石灰化は、冠動脈硬化の存在および冠動脈プラークの量と相関しており、総死亡および冠動脈イベントと密接に関連することが国内外で報告されている。その一方で、急性冠症候群(ACS)発症に関連するプラークの病理学的特徴として、大部分は石灰化を認めず、認めたとしても微細な石灰化にとどまるとの報告もある。卜部氏らは、ACS自験例でも同様の傾向を認めたため、今回、冠動脈石灰化スコアと非石灰化プラークの頻度・性状との関連について検証した。

 対象は、2006年1月〜2009年6月に、冠動脈疾患の精査のために64列CTによる冠動脈造影(CCTA)検査を施行した症例から、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス手術(CABG)の既往例と、アーチファクトによるプラーク性状判定困難例を除いた519例とした。

 石灰化スコアはAgatston法に基づき、各スライスにおける石灰化部分の最高CT値によって1〜4の重み付けを行い、これに石灰化面積を乗じた上で、すべてのスライスにおける同値の総和として算出した。

 CCTAによる評価については、同検査で50%以上の狭窄病変を認めた場合を「閉塞性冠動脈疾患(CAD)」と定義した。その際、石灰化プラークで内腔が視認できない場合も、CADとした。また、プラークの分類は、石灰化成分のみのプラークを「石灰化プラーク」、CT値120HU以下の成分を1mm2以上含むものを「広義の非石灰化プラーク(NCP)」と定義した。

 対象患者の石灰化スコアは、0が150例、1〜100が144例、101〜400が134例、401〜1000が53例、1001以上が38例だった。各群における冠動脈イベントのリスク因子を解析すると、年齢、男性の割合、高血圧・脂質異常症・糖尿病の合併率、喫煙率が石灰化スコアと相関した。

 CAD罹患率については、石灰化スコアの上昇に伴って右肩上がりに高値となった。だがNCP陽性率は石灰化スコアと直線的な関係は見られず、石灰化スコアが0の群でも28%に認められ、同値が101〜400の群で84%と最大になり、それ以上の群では減少傾向にあった。

 さらに、NCPの脆弱化因子であるpositive remodeling(PR)、low CT density plaque(LDP)、spotty calcification(SC)の所見陽性率と石灰化スコアとの関連でも、いずれも石灰化スコアが1001以上の群より、同値が101〜400、または401〜1000の群で高率だった。

 卜部氏は今回の結果から、「石灰化スコアの上昇とCAD増加との間には関連を認めたが、脆弱性因子を有する非石灰化プラークの陽性頻度は石灰化スコアとは乖離していた。その原因の1つとして、現状のCCTAの解像度の限界が考えられる。また石灰化プラークでは、プラークの破綻とは別の機序が総死亡および冠動脈イベントに関連している可能性もある」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)