2型糖尿病患者にDPP-4阻害薬シタグリプチンを投与し、血流依存性血管拡張反応FMD)を指標に血管内皮機能の変化を検討した結果、有意なFMDの改善を認め、シタグリプチンが血管内皮機能を改善する可能性があることが示唆された。9月23日から25日まで神戸市で開催された日本心臓病学会JCC2011)において、日本医科大学の久保田芳明氏らが報告した。

 インクレチンは血管内皮機能を改善する作用を持つことが報告されている。そのためインクレチンの分解を抑制し、その作用を増強するDPP-4阻害薬にも血管内皮機能改善効果が期待されるが、これを直接検討した報告はなかった。

 そこで久保田氏らは、2型糖尿病患者に通常用量(50mg/日)のシタグリプチンを12週間にわたって投与し、治療前後におけるFMDを比較した。また副次評価項目として、HbA1c値、空腹時血糖値、内皮保護的に働くアディポネクチン、NO産生を阻害する非対称性ジメチルアルギニン(AMDA)値の変化について評価した。

 健常成人のFMDは6〜7%程度であることから、今回の検討ではFMD<6%を「FMD低下」と定義し、これに該当する2型糖尿病患者を対象とした。ただし、インスリン療法中の患者、透析患者、内皮機能の改善作用が報告されているピオグリタゾンを服用中の患者は除外対象とし、最終的に28人(平均70±8歳、男性22人)について評価した。

 その結果、12週後のHbA1c値はベースライン時の7.2%から6.2%へと有意に低下し、FMDは4.31%から5.31%へと有意に増加した(ともにp<0.001)。一方で、ニトログリセリン刺激に対する血管拡張応答は不変だったことから、FMDの変化が内皮機能の変化に基づくものであることが示唆された。

 また、アディポネクチンとADMAについても有意な改善が認められた(アディポネクチン:12.91μg/mL → 14.79μg/mL、ADMA:0.51μmol/L → 0.41μmol/L、ともにp<0.05)。

 続いて久保田氏らは、1%以上のFMD増加を「FMD改善」と定義した上で、既知の動脈硬化危険因子(年齢、性別、喫煙、HbA1c、頸動脈内膜中膜複合体厚〔IMT〕)を独立変数とした多変量解析を行い、「FMD改善」との関連を検討したが、いずれの因子についても有意な関連は認められなかった。このことから、シタグリプチンによるFMDの改善は、既知の危険因子の改善とは独立した機序に基づくものと考えられた。

 その機序について久保田氏らは、「インクレチンはGLP-1受容体を介してGLP-1活性を増強し、細胞質中のcAMP濃度上昇、NO合成酵素の発現促進により、血管壁に対して抗炎症作用を示し、内皮機能の改善をもたらすと考えられている。シタグリプチンも同様の機序で内皮機能の改善に至ったのではないか。加えて、アディポネクチンの増加、ADMAの低下も、NO合成酵素の発現促進に働いていると考えられる」と考察した。そして「内皮機能が低下した症例において、シタグリプチンは血糖降下作用とともに、血管内皮機能を改善する可能性が示唆された」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)