鹿児島大学心臓血管内科の岩谷徳子氏

 園芸やガーデニングは、心血管イベントの発症予防策として効果が期待できそうだという。鹿児島大学心臓血管内科の岩谷徳子氏らが、9月23日から25日まで神戸市で開催されていた第59回日本心臓病学会JCC2011)で発表した。

 喫煙、肥満、運動不足、ストレスなどの改善が、長期的に心血管疾患や糖尿病の回避につながることが数多く報告されている。岩谷氏らは、園芸やガーデニングは心身の活動性の向上やストレスの解消に寄与すると考えられることから、土いじりを楽しむことによる冠動脈内皮機能や心血管予後の改善効果について検討した。

 対象は、虚血性心疾患の精査目的で冠動脈造影を施行し、30%以上の有意冠動脈病変を認めなかった連続111例(女性42例)。年齢は62±12歳、追跡期間は930±531日だった。

 検討では、対象患者の左前下行枝にドプラガイドワイヤーを留置し、パパベリン、アセチルコリン、ニトログリセリンをそれぞれ投与した時の冠血流量や冠血管径の変化を計測した。

 予後は、外来での聞き取りや郵送・電話によって調査した。その際、主要心血管イベント(心疾患による入院、心臓死、冠血行再建術、致死性不整脈)の有無とともに、生活習慣およびライフスタイルの項目の中に、「土いじりを楽しんでいますか」との質問を加えた。

 解析では、土いじりを楽しんでいると答えた82例をガーデニング群とし、残りの29例を対照群とした。患者背景、生化学検査値、経胸壁心エコー、血行動態には、両群間に有意差はなかった。また、ベースライン時の冠血流量および冠血管径にも有意差はなく、パパベリンおよびニトログリセリンを投与した際の内皮非依存性血管拡張反応にも、両群間に有意差はなかった。

 これに対してアセチルコリン投与時の内皮依存性血管拡張反応では、冠血流量変化率(84±109% vs. 35±97%、P<0.05)、冠血管径変化率(−10±25% vs. −22±31%、P<0.05)ともにガーデニング群の方が対照群よりも有意に良好で、ガーデニング群の方が内皮機能は保たれていることが示唆された。

 Kaplan-Meier法による心血管予後の解析でも、ガーデニング群は対照群に比べ、主要心血管イベントの回避率が15%、有意に高かった(Logrank、P<0.01)。

 さらに、主要心血管イベントの予後規定因子についてロジスティック回帰分析を行ったところ、喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病、性別、年齢には両群間に有意差を認めなかったが、土いじりはオッズ比11.9(95%信頼区間:1.77-79.5)となり、有意な予後規定因子と判定された(P=0.01)。

 以上の結果から岩谷氏は、「園芸やガーデニングを楽しむことは、活動性や筋力の維持につながると考えられ、それが血管内皮機能に好影響を与える可能性もある。都会と地方の環境に違いはあるが、心血管イベントを回避するためにも、できるだけ土いじりを勧めてはどうか」と提案した。

(日経メディカル別冊編集)