弘前大学医学部附属病院循環器内科の樋熊拓未氏

 急性心筋梗塞の早期診断において、心筋由来のバイオマーカーを確認することは重要だが、発症早期には変化しないことも多い。近年、トロポニンに対する高感度測定法が開発され、従来の測定法に比べて、急性心筋梗塞や急性冠症候群の早期診断に有用との報告がある。しかし、日本人においても高感度トロポニン測定が有用であるか否かは明らかになっていない。弘前大学医学部附属病院循環器内科の樋熊拓未氏らは、日本人の急性心筋梗塞患者においてトロポニンの早期診断能について検討した。その結果、高感度トロポニンIおよびトロポニンIは高感度トロポニンTよりも診断精度が高いことを、9月23日から開催されていた第59回日本心臓病学会JCC2011)において報告した。

 対象は急性心筋梗塞発症から24時間以内に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した42例(男性は33例、年齢は66歳)で、そのうちST上昇型心筋梗塞は38例、発症から来院までの時間は376分であった。一方、待機的PCIを施行した安定狭心症患者92例(男性は71例、年齢は69歳)を対照群とした。トロポニンI、高感度トロポニンI、高感度トロポニンTによる急性心筋梗塞の診断精度については、ROC解析で比較した。

 トロポニンI濃度は急性心筋梗塞群が11.91ng/mL、安定狭心症群が0.09ng/mL、高感度トロポニンI濃度はそれぞれ17.727ng/mL、0.062ng/mL、高感度トロポニンT濃度はそれぞれ0.858ng/mL、0.029ng/mL。いずれのトロポニン測定でも急性心筋梗塞群の方が有意に高かった(すべてp<0.0001)。

 各トロポニンのROC曲線の曲線下面積(AUC)を算出したところ、高感度トロポニンIが0.987、高感度トロポニンTが0.969、標準トロポニンIが0.978で、トロポニンIおよび高感度トロポニンIのAUCは高感度トロポニンTのそれに比べて高値であった。

 次に、発症4時間以内の急性心筋梗塞患者17例を対象に同様の検討を行ったところ、ROC曲線のAUCは高感度トロポニンIが0.984、標準トロポニンIが0.982と変化しなかったが、高感度トロポニンTのAUCは0.949とやや低下した。

 こうした結果から樋熊氏は、「急性心筋梗塞の診断において、トロポニンIは標準法でも高感度法でも診断精度が高く、差が認められなかった」と述べた。また、発症早期には高感度トロポニンTの診断精度は低下したが、トロポニンIの診断精度は標準法でも高感度法でも維持されたことから、「トロポニンIはいずれの測定法でも急性心筋梗塞の早期診断に有用と考えられる」と語った。

(日経メディカル別冊編集)