名古屋大学の植村祐介氏

 酸化LDLの1つのマロンジアルデヒド修飾LDLMDA-LDL)は、LDLコレステロール(LDL-C)などの標準的な脂質マーカーより有用な心血管疾患のリスクマーカーとなることが報告されている。その低下をもたらすには、スタチンを増量するよりエゼチミブを併用した方が効果的であることが示された。9月23日から25日まで神戸市で開催されている日本心臓病学会JCC2011)において、名古屋大学の植村祐介氏らが報告した。

 心血管疾患の1次予防、2次予防において、スタチンによるLDL-C低下療法の有用性は明らかだが、通常用量のスタチン単剤では残存リスクの存在やLDL-C管理目標の達成率が低いことが報告されている。特に、糖尿病合併例や冠動脈疾患既往例のようなハイリスク患者に対しては、より積極的な脂質管理を考慮する必要がある。

 そこで植村氏らは、耐糖能異常を有する冠動脈疾患患者を対象に、アトルバスタチン通常用量への追加療法として行う、エゼチミブ併用とアトルバスタチン増量を比較するクロスオーバー試験を実施した。

 対象は、アトルバスタチン10mg/日を3カ月以上にわたって服用中の糖尿病合併または耐糖能異常(IGT)を有する冠動脈疾患患者39人(平均年齢67.8歳、男性30人、IGT 21人)。これらの患者をエゼチミブ10mg/日を追加する群(併用群)、またはアトルバスタチンを20mg/日に増量する群(増量群)に無作為に割り付け、12週間の治療後、治療法をクロスオーバーしてさらに12週間治療し、各治療前後の血清脂質、糖代謝プロファイルの変化を比較検討した。

 その結果、LDL-Cは併用群、増量群ともに、ベースライン時に比べて治療12週後は有意に低下したが、併用群の方が大きく低下していた([併用群]111.6mg/dL → 82.9mg/dL:p<0.0001、[増量群]111.6mg/dL → 98.4mg/dL:p<0.0001)。HDLコレステロール(HDL-C)は両群で同等に増加した([併用群]46.7mg/dL → 52.8mg/dL:p<0.0001、[増量群]46.7mg/dL → 50.0mg/dL:p=0.0370)。

 また、併用群ではアポB/アポA1比やレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)についても有意な改善(0.73 → 0.57:p<0.0001、4.40mg/dL → 3.85mg/dL:p=0.0360)が認められたが、増量群では有意差が認められなかった。

 さらに、増量群のMDA-LDLレベルは不変だったのに対し(109.0 U/L → 106.0 U/L:ns)、併用群では有意な低下が認められた(109.0 U/L → 87.7 U/L:p=0.0009)。

 クロスオーバーによる治療法の順序の違いは、LDL-CおよびMDA-LDLの推移に影響しなかった。

 以上のように、エゼチミブの併用とアトルバスタチンの増量はいずれもさらなるLDL-C低下をもたらすが、MDA-LDLはエゼチミブ併用群のみ低下が認められた。。

 エゼチミブ併用群でのみMDA-LDLの低下が得られた理由については、MDA-LDLの原料となるLDL-Cの低下が増量群より大きかったことに加え、▲┘璽船潺屬虜醉僂砲茲蠖事由来の酸化コレステロールの吸収が抑制されたこと、レムナントの停滞や食後高脂血症の是正に伴いLDL酸化が抑制されたこと、などが考えられるという。

 これらの結果と考察を踏まえ植村氏は、「糖代謝異常を示す冠動脈疾患患者に対する積極的脂質低下療法として、アトルバスタチンとエゼチミブの併用は、有用と考えられる。ただし両剤の併用が心血管イベントの発症抑制につながるかどうかについては、今後、前向きの検討が必要だ」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)
 
 
【訂正】
2011年10月6日に以下を訂正しました。
・MDA-LDL値の単位をmg/dLとしていましたが、正しくはU/Lでした。