大阪市立総合医療センター循環器内科の松三博明氏

 ネオブテリン高値の安定狭心症患者は、ネオブテリン低値の患者と比較して、再狭窄などの心事故の発生率が有意に高いことが明らかになった。9月23日から25日まで開催されている第59回日本心臓病学会(JCC2011)で大阪市立総合医療センター循環器内科の松三博明氏らが報告した。
 
 今回、松三氏らはミエロペルオキシダーゼ(MPO)、ネオプテリン、骨髄関連蛋白複合体(MRP8/14)、高感度CRP(hs-CRP)の4つのバイオマーカーが、安定狭心症における心事故の予測因子になるかどうかを検討した。

 対象は、2004年2月から2007年12月に冠動脈造影で有意狭窄病変を確認した安定狭心症連続219例(年齢66.4±9.6歳、男性79%、高血圧、高脂血症はいずれも64%、糖尿病40%、喫煙65%、心筋梗塞[MI]既往16%)で、治療内容は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)91%、冠動脈バイパス術(CABG)4%で、退院時処方薬はアスピリン96%、高脂血症治療薬59%。

 入院時に血液検査を行い、血漿中MPO値、血漿中ネオプテリン値、血清中MRP8/14値、hs-CRP値を測定。それぞれを中央値に基づいて高値群と低値群に分けて、心事故(心臓死/非心臓死、致死性/非致死性MI、不安定狭心症、標的病変・血管の再血行再建術、心不全、脳梗塞)発生との関係を検討した。

 平均観察期間20±14カ月において、56例(26%)が心事故を発症した。内訳は、標的病変・血管の再血行再建術が29例と最も多く、他に心臓死2例、非心臓死3例、致死性/非致死性MI 2例、不安定狭心症9例、心不全9例、脳梗塞2例だった。

 Kaplan-Meier法による追跡調査では、ネオプテリン高値群が低値群に比べて心事故の発生率が有意に高かった(p=0.015)。他のバイオマーカーは、両群間に有意差はなかった。

 性別や年齢、合併症、退院時処方といた臨床的背景を含むさまざまな因子について多変量解析を行ったところ、糖尿病(オッズ比[OR]:2.176、95%信頼区間[CI]:1.161-4.079、p=0.015)と、ネオプテリン高値(OR:2.152、95%CI:1.149-4.032、p=0.017)のみが、心事故発生の独立した予測因子として同定された。

 これらの結果から松三氏は「産生機序が異なるバイオマーカーであるMPO、ネオプテリン、hs-CRP、MRP8/14のうち、安定狭心症の心事故発生の予測因子として、ネオプテリンが最も有用であることが示唆された」と結論した。

 また、今回、心事故のほとんどが再血行再建術だったことについて、「ネオプテリン高値の患者は、安定狭心症の中で、プラークの不安定性、炎症活性が高いと言えるのではないか」と考察。「これらの患者を高リスク群として心事故予防のための薬物介入などを考慮すべきか」との質問に対して松三氏は、「今回は、スタチンが投与されていた患者が6割しかいなかったが、スタチンがネオプテリンを下げるとの報告がある」と、薬物介入の意義を示唆した。また今回、高値群、低値群に分けて比較したが、これがカットオフ値として適切であるのかどうか、どこにカットオフ値をおくべきかについては、今後の課題とした。

(日経メディカル別冊編集)