愛媛県立新居浜病院循環器内科の坂上智城氏

 わが国では2008年に冠攣縮性狭心症の診療ガイドラインが作成されたが、同疾患への配慮は十分ではない。こうした状況の下、愛媛県立新居浜病院循環器内科の坂上智城氏らは、心カテーテル検査の施行例を対象としたレトロスペクティブな検討から冠攣縮性狭心症患者が増えていることを、9月23日から開催されている第59回日本心臓病学会JCC2011)において報告した。

 日本人における冠攣縮性狭心症の発現率は白人に比べて3倍高いとされる。しかし、わが国においても、経皮的冠動脈インターベンションPCI)施行時に、冠攣縮に対し十分な注意を払っているとは言い難い。

 1991年から2009年までの間に、同氏らの施設で心カテーテル検査によって冠攣縮性狭心症と確定診断されたのは624例。一方、同期間に心カテーテル検査は4435件、PCIは1307件、冠攣縮誘発負荷試験は2244件施行されていた。なお、冠攣縮誘発負荷試験はアセチルコリン(1295件)あるいはエルゴノビン(949件)を負荷して行い、冠攣縮性狭心症は一過性の内腔狭小>90%、および胸痛あるいは虚血性の心電図所見を基に診断した。

 1991〜2000年を前期、2001〜2009年を後期とし、患者背景を比較したところ、前期に比べて後期では、冠攣縮性狭心症患者の年齢は有意に高く(p<0.01)、70歳代、80歳代の患者数が著しく増加していた。また、高血圧や糖尿病の保有率、喫煙率は変わらなかったが、脂質異常症の保有率は有意に上昇し(p<0.05)、総コレステロール値、トリグリセリド値、空腹時血糖値も有意に高かった(いずれもp<0.01)。

 各検査の施行件数を比較したところ、心カテーテル検査の施行件数には前期と後期で大きな違いはなかったが、PCI施行数は前期419件、後期888件と、約2倍に増えていた。しかし、冠攣縮誘発負荷試験の施行件数は前期1300件、後期944件と減少していた。最終的に冠攣縮性狭心症と診断された患者数は前期285例、後期339例で、1年当たり診断例数にすると前期が28.5例、後期が37.7例となり、後期の方が多かった(p<0.01)。

 冠攣縮性狭心症と診断された患者数の増加は、冠攣縮誘発負荷試験の総施行数に対する割合で評価しても明らかで、その割合は前期には21.9%であったが、後期には35.9%に増加していた(p<0.01)。

 以上の検討から坂上氏は、「わが国では、冠攣縮性狭心症患者は増えている」と述べ、PCI施行時には冠動脈の攣縮にも十分に配慮すべきであると注意を促した。

(日経メディカル別冊編集)