川崎医科大学循環器内科の今井孝一郎氏

 心房細動AF)患者の脳梗塞発症リスクを評価するCHADS2スコアで1点と評価された低リスク症例において、抗凝固療法の必要性を判断する際、CHADS2スコアをさらに細かく層別化したCHA2DS2-VAScスコアが有用とのデータが示された。川崎医科大学循環器内科の今井孝一郎氏らが、9月23日から開催されている第59回日本心臓病学会JCC2011)で報告した。

 AF患者の脳梗塞発症リスクを層別化するツールとして、CHADS2スコアが広く使用されている。CHADS2スコア(0〜6点)が2点以上の中〜高リスク症例に対しては、以前より抗凝固療法が推奨されているが、1点以下の低リスク症例への対応は明確にされていなかった。このため、低リスク症例においては、抗凝固療法による効果と脳出血リスクとの間で判断に苦しむ場合が多かった。

 こうしたなか、欧州心臓学会(ESC)は、昨年夏に発表した新しいガイドラインでCHA2DS2-VAScスコアを導入した。CHADS2スコアのリスク因子の1つである年齢(75歳以上)の重みづけを1点から2点に増やすとともに、新たな3つのリスク因子(血管疾患[心筋梗塞・末梢動脈疾患・大動脈プラーク]、年齢65〜74歳、女性が各1点)を加え、0〜9点で評価する。脳梗塞の発症率は、スコアの上昇に伴って増大する成績が報告されている。このESCガイドラインに基づくと、CHADS2スコアで1点以下と評価された症例の一部が、CHA2DS2-VAScスコアの2点以上に相当し、ワルファリンの適応になる。

 一方、わが国では、今年8月に日本循環器学会より発表された「心房細動における抗血栓療法に関する緊急ステートメント」によれば、CHADS2スコアが1点の場合、「ワルファリンを考慮可」「ダビガトランを推奨」となっている。しかし、CHA2DS2-VAScスコアについては触れられていない。

 今回、今井氏らは日本人のAF患者においてもCHA2DS2-VAScスコアが脳梗塞発症予測に有用か否かを検討した。対象は、非弁膜症性AF(NVAF)347例(男性226例、女性121例、平均年齢72.3歳)。観察期間は2年。

 CHA2DS2-VAScスコアでは、CHADS2スコアと同様に、スコアが高い群ほど年間脳梗塞発症率が上昇した。CHADS2スコアが1点の症例は108例(31.1%)だったが、それらの症例のCHA2DS2-VAScスコアは、1点が18例、2点が59例、3点が25例、4点が6例。これら4群の脳梗塞発症率はそれぞれ1.8%、2.8%、5.3%、5.6%と差が見られ、特にCHA2DS2-VAScスコアが3点以上の症例で高かった。

 以上の成績から、今井氏は「日本においても、CHADS2スコア、CHA2DS2-VAScスコアにより、NVAFの脳梗塞発症予測が可能」とした上で、「CHADS2スコアが1点の症例で抗凝固療法を行うかどうかの判断に、CHA2DS2-VAScスコアが有用である可能性が示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)