乳房温存手術後、再発リスクの低い患者に限定すれば、放射線治療をしなくても再発しない例が多いことが、長期の前向き研究で確認された。大阪府立成人病センターの稲治英生氏が班長を務める厚生労働省がん研究助成金研究によるもので、9月26日〜27日に大阪で開催された日本乳癌学会学術総会で、国立病院四国がんセンターの大住省三氏が発表した。

 乳房温存手術後の乳房内の再発は、乳房への放射線照射により3分の1に減少されることが知られ、現在では術後の放射線治療は標準的な治療とされている。その一方で、放射線治療を行わないグループを特定するための研究も行われてきたが、現在までに明確な結果は得られていない。

 そこで研究班は、別の研究班で明らかとなった乳房内再発のリスク因子(組織学的断端陽性で、40歳未満、エストロゲンレセプター陰性、タモキシフェン投与なし)を参考に、対象を再発リスクのない患者に限定した。まず触診腫瘍径が3cm以下で、組織学的に腋窩リンパ節転移がなく、50歳以上の閉経後女性で、原発巣のエストロゲンレセプターが陽性、断端から5mm以内に腫瘍細胞が見られない断端陰性を条件とした。

 平成14年10月から17年3月までに、13施設123人が登録され、追跡期間は5年間とされた。患者の平均年齢は65.3歳(51〜84歳、中央値は64歳)。腫瘍径は平均で1.6cmだった。

 乳房部分切除と腋窩郭清あるいはセンチネルリンパ節生検を行った後に、8週間以内に、タモキシフェン20mg/日あるいはアナストロゾール1mg/日を投与し、術後に放射線治療や補助化学療法を行わないこととした。

 その結果、開始当初、タモキシフェンの投与が70%を占め、アナストロゾールは28%だったが、「試験の途中でタモキシフェンからアロマターゼ阻害薬にスイッチするほうが予後はいいという研究結果が出た影響で」(大住氏)、現在ではタモキシフェンは40%、アナストロゾールが37%となった。

 追跡期間中央値36カ月(13〜58カ月)の時点で、乳房内再発は3人、遠隔転移が1人、対側乳癌が1人、子宮癌が1人だった。ただし再発の3人のうち1人は断端から2mmのところで判定しており、本来は除外されるケースだったという。

 これらのことから、班長である稲治氏は、「組織学的断端を適切に判定すれば、乳房温存術後、放射線治療を不要とするケースもあることが示された」と語った。