9月26日〜27日に、大阪国際会議場(大阪市北区)で第16回日本乳癌学会学術総会が開催される。同総会のテーマは「標準化から個別化へ」。近年、乳癌の標準治療についてはある程度進展し、標準化できたことから、今後は個別化診療にも取り組むべきという考えから選ばれたテーマだ。個別化は、薬物療法のオーダーメイド治療だけでなく、治療モダリティや、検診、診断の各場面での最適な診療を目指すものとしている。

 また、Breast Cancer Week 2008として、International association for breast Cancer Researchとのジョイント・シンポジウムを設けているのも今学会の特徴の1つだ。臨床的研究成果だけでなく、基礎研究についても合わせて知るチャンスとなる。

 日本乳癌学会総会に先立ち、9月3日に行われたプレスカンファレンスでは、総会会長である大阪府立成人病センター乳腺・内分泌外科の稲治英生主任部長が学術総会のトピックスを紹介した。「今回、応募演題数は学会記録更新の1500超だった。このため、シンポジウムなどの特別演題は採択率21.4%という限られた演題のみの採用になった」と学会の盛り上がりを強調した。また、乳癌診療ガイドライン改訂や、乳癌取扱規約改訂についての説明会も実施する計画で、「センチネルリンパ節生検に対する他施設共同臨床確認試験」の中間報告も行い、特別報告についても多くの時間を割くのも特徴だ。

 特別報告の関連では、招待講演でセンチネルリンパ節生検の第一人者であるJohn Wayne Cancer Institute の Armando E Giuliano氏の「An overview of the clinical research of the sentinel node.」が開催される。センチネルリンパ節は、癌が転移するときに最初に到達するリンパ節。このリンパ節への転移の有無により切除を最小限にとどめることができるため、現在日本でも保険適用を目指して『センチネルリンパ節生検に対する他施設共同臨床確認試験』が実施されており、現在全国46施設で1600例のデータを集積しているところだ。その中間報告が行われ、今年度中に厚生労働省に保険適用についての申請を予定しており、注目の演題といえよう。

 また、シンポジウムは、「乳癌診療における画像診断の進歩」「術前薬物療法の原料と展望」「トリプルネガティブ乳癌の基礎と臨床」が行われる。「術前薬物療法の現状と展望」では、化学療法だけでなく、ホルモン療法やハーセプチンなどの使用について発表され、実践的な内容になると見られる。

 さらに、「ディベートセッション」として、特定の治療に関する賛成派、反対派からの意見交換セッションも開催される。テーマは、「鎖骨上リンパ節転移のみの再発乳癌に対する局所療法は妥当か?」「内分泌感受性HER2陰性の閉経後リンパ節転移陰性乳癌に対する化学療法は妥当か?」の2つ。稲治氏は、「どちらかに結論が出るものではないが、おおいにディベートして知見を深めてほしい」としている。

 プレスカンファレンスでは、日本乳癌学会理事長で川崎医科大学教授の園尾博司氏が、日本の乳癌の現状と学会の活動実績などについても解説した。園尾教授は学会の活動について、「07年度から学会員のみならず一般の人にも、全国の主要施設における全国乳がん患者登録調査のデータの一部を公開しており、乳癌の早期発見と診療の均てん化を目指している。今後は、施設ごとの発見状況や死亡率などについても公表する予定だ。こうした取り組みを行う学会は数少ないのでは」とした。

 また、検診については、我が国におけるマンモグラフィー併用乳癌検診の遅れを指摘。検診で要精査とされ、明らかに早期癌と考えられるケースが見逃されている事例があることから、精密検診実施機関の基準作りの重要性を訴えた。学会では、「精密検診実施機関の基準」に関する指針を作成。その条件として、(1)マンモグラフィーだけでなく、超音波検査にも習熟した医師や技師が検査を行うこと、(2)乳癌学会の専門医や認定医が常勤していること、などを挙げた。園尾氏は、「学術総会までにこの基準作りを行いたい」と語った。