鹿児島大学循環器・呼吸器・代謝内科学の嘉川亜希子氏

 閉経後女性においては、HDLコレステロール(HDL-C)が内皮機能の指標である血流依存性血管拡張反応(FMD)に影響する因子であることが分かった。さらに、酸化ストレスのマーカーであり、酸化LDLの一種であるマロンジアルデヒド修飾LDL(MDA-LDL)や、内因性NO合成阻害物質のADMAも、HDL-Cと相関関係を示した。鹿児島大学循環器・呼吸器・代謝内科学の嘉川亜希子氏らが7月19、20日と福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で発表した。

 虚血性心疾患の罹患率には性差があることが分かっている。内皮機能についても、性差があることが知られている。男女別に年齢ごとのFMDを見ると、女性のFMDが低下し始めるのは男性よりも10年ほど遅いが、更年期以降は内皮機能が低下する速度が男性よりも速いことが報告されている。更年期以降に低下速度が加速する要因は分かっていないため、更年期女性の冠動脈の内皮機能を調べ、影響する因子について検討した。

 対象は、冠動脈造影を行って、冠動脈に50%以上の有意狭窄を持たないことが分かった閉経後女性50例(平均年齢68歳)と、年齢をマッチさせた男性93例(平均年齢66歳)とした。BMI、平均血圧、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)、HDL-C、空腹時血糖、インスリン抵抗性(HOMA-R)、高感度CRPをそれぞれ計測した。背景は、HDL-C以外は、男女間で有意差はなかった。HDL-Cのみ女性で有意に高かった(P<0.01)。

 まず、左冠動脈の血管径をコントロールとして測定した後、左冠動脈に選択的にパパベリンを注入して血流量を増やして血管径を測定し、%FMD(=[パパベリン注入後の血管径−コントロールの血管径]÷コントロールの血管径×100)を算出した。その後、ニトログリセリンを注入して内皮非依存性拡張反応を調べるため、%NTG(=[ニトログリセリン注入後の血管径−コントロールの血管径]÷コントロールの血管径×100)を算出した。%FMD、%NTGともに男女間で有意差はなかった。

 各因子と%FMDの関連を男女別に検討した。単回帰分析で検討した結果、閉経女性のおいてのみ、TG(P=0.03)とHDL-C(P=0.0065)が%FMDに影響を与える有意な因子だった。さらに重回帰分析を行ったところ、HDL-C(P=0.04)のみが有意な因子として検出された。

 HDL-Cの内皮機能改善作用は、抗酸化作用を介しているという報告があるため、MDA-LDLを追加で測定することとした。追加検討であったため、男性55例、閉経女性30例人と対象が限られたが、男女間で血清MDA-LDL値に有意差はなかった。しかし、閉経女性においてのみ、HDL-C値が高値であるほどMDA-LDLが有意に低値であるという相関関係を認めた(r=−0.45、P<0.02)。

 次に、内皮機能障害にHDL-Cがどのように影響するかを検討した。HDL-Cは、NO産生を活性化させて内皮機能を改善するという報告もあるため、ADMAを測定した。血清ADMA値は、男性27例と閉経女性32例において有意差がなかったが、閉経女性においてのみ、HDL-C値と血清ADMA値に有意な負の相関を認めた(r=−0.42、P=0.03)。

 これらの結果から嘉川氏は、「HDL-Cは閉経後女性の冠動脈の内皮機能に強く関連する因子であり、酸化ストレスやADMAの減少作用を介して影響することが示唆された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)