昭和大学循環器内科学の正司真氏

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群ACS)の患者において、血清脂質に関する詳細な解析を行ったところ、心臓リハビリテーション実施に伴いコレステロールリッチなHDL2が増加したことを分かった。昭和大学循環器内科学横田裕哉氏、正司真氏らが、7月19、20日と福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で発表した。

 運動療法をベースとした心リハはHDLコレステロール(HDL-C)値を上昇させることが知られている。さらに正司氏らはHDLの亜分画であるHDL2の変化について既に検討しており、心リハによりHDL2コレステロール(HDL2-C)値やHDL2-C/HDL-C比が上昇することを報告している。

 そこで今回は、HDL亜分画中のアポリポ蛋白などに及ぼす影響について検討した。対象はACS患者でPCIが成功し、週1〜3回の心リハを平均6カ月間にわたって実施した84例。背景は年齢が64.7歳、男性が87.5%を占め、冠動脈疾患の既往率は50.6%、家族歴は10.2%が保有していた。さらに、喫煙率は42.0%で、合併症の保有率は高血圧が77.5%、脂質異常症が37.5%、糖尿病が27.2%だった。

 心リハ実施前の処方状況は、脂質低下薬が62.5%、Ca拮抗薬が21.8%、ACE阻害薬が10.5%、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が11.5%、β遮断薬が18.0%、抗血小板薬が50.0%だった。心リハ実施後には脂質低下薬と抗血小板薬の処方率が有意に高まり、それぞれ96.0%、97.3%となった(いずれもP<0.0001)。

 血清脂質プロファイルに関しては心リハの実施前後で、LDLコレステロール(LDL-C)値は111.3mg/dLから88.7mg/dLに、small dense LDL-Cは38.7mg/dLから23.7mg/dLに、non HDL-Cは137.4mg/dLから112.7mg/dLにそれぞれ有意に低下した(いずれもP<0.0001)。一方、HDL-Cは43.3mg/dLから50.1mg/dLに有意に上昇した(P<0.01)。また、トリグリセライド、HbA1c、空腹時血糖では有意な変動は認められなかった。

 HDLの亜分画やアポリポ蛋白については、HDL2-Cは22.1mg/dLから28.9mg/dLに、ApoA1は128.9mg/dLから142.7mg/dLに、ApoA2は26.2mg/dLから29.4mg/dLにそれぞれ有意に増加した(順にP<0.0001、P<0.001、P=0.0002)。また、HDL2中のApoA1は64.6mg/dLから77.0mg/dLに、同ApoA2は7.6mg/dLから9.3mg/dLに、同コレステロール/ApoA1比は33.2%から36.8%にいずれも有意に増えた(P<0.0001、P=0.0004、P<0.001)。

 以上から、6カ月間の心リハ実施に伴い、HDL2、特にコレステロールリッチなHDL2が増加することが明らかになった。脂質低下薬の処方率が高まっているものの、これらのHDL-C上昇作用はあまり大きくないと考えられることから、正司氏は、「心臓リハビリテーションによって、コレステロール逆転送系が活性化されたことを示唆するデータだ」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)