防衛医科大学の近藤春美氏

 防衛医科大学の近藤春美氏らは、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬のエゼチミブがコレステロール逆転送の促進作用を持つことを、トリチウムで標識したコレステロールを用いた動物実験で確認した。マウスを用いた類似の研究は既に報告されているが、マウスはコレステロールエステル転送蛋白(CETP)が欠損しているため、近藤氏らはヒトと同様にCETPを有するハムスターを用いた。研究成果は7月20日まで福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で発表された。

 近藤氏らは、7週齢の雄性ゴールデンハムスターを、(1)通常餌のみを与える通常餌コントロール群、(2)通常餌にエゼチミブ2mg/kg/日を追加する通常餌+エゼチミブ群、(3)コレステロール0.5%の高コレステロール餌を与える高コレステロール餌コントロール群、(4)高コレステロール餌にエゼチミブ2mg/kg/日を追加する高コレステロール餌+エゼチミブ群の4群(各群はn=5〜6)に割り付け、2週間飼育した。

 投与開始2週間後、各群の血清脂質の違いを確認するとともに、各群にトリチウムで標識したコレステロールを含むハムスターのマクロファージを腹腔内投与し、24時間後と48時間後に血清、72時間後に血清、肝臓、胆汁、糞便に含まれるトリチウムの放射能活性を測定し、各群におけるコレステロール逆転送の違いを比較検討した。

 投与開始2週間後の血清脂質の解析では、通常餌と高コレステロール餌投与群のいずれでも、エゼチミブの追加投与により、総コレステロール(TC)とnon HDLコレステロール(non HDL-C)は有意に低下し(いずれもP<0.001)、HDL/non HDLコレステロール比は有意に増加した(それぞれP<0.001、P<0.01)。

 トリグリセライド(TG)は、高コレステロール餌投与群においては、エゼチミブ追加投与群で非投与群に対して有意な低下を認めたが(P<0.001)、通常餌群では低下傾向を認めたものの有意差は見られなかった。

 HDLコレステロール(HDL-C)は、高コレステロール餌のエゼチミブ追加投与群では非投与群に対して有意な低値を示したが(P<0.001)、通常餌群ではエゼチミブ投与による有意な変化は認められなかった。

 また、肝臓中のTCおよびTGは、高コレステロール餌群でのみ、エゼチミブ投与群が非投与群に対してそれぞれ有意に低かった(いずれもP<0.001)。

 コレステロール逆転送の解析では、トリチウム標識したコレステロールを含むマクロファージを腹腔内投与し、トリチウム放射能活性を調べた。その結果、マクロファージ投与24時間後には、通常餌群、高コレステロール餌群とも、エゼチミブ投与群で血清における放射能活性の有意な減少を認めた(いずれもP<0.01)。FPLCを用いて分析したところ、通常餌群と高コレステロール餌群のいずれにおいても、エゼチミブ投与群では非投与群に対し、LDL-CおよびVLDL-Cが減少していることが示された。

 72時間後の肝臓の解析では、通常餌と高コレステロール餌の両群で、エゼチミブ投与群で放射能活性の有意な減少を認めた(P<0.05、P<0.001)。

 しかし胆汁においては、通常餌コントロール群に対して高コレステロール餌コントロール群で放射能活性が有意に低値だったほか(P<0.05)、高コレステロール餌群では、有意差はないもののエゼチミブ投与群の方が非投与群よりも放射能活性が大きい傾向を認めた。

 コレステロール排出の最終段階である糞便中の放射能活性は、通常餌、高コレステロール餌群とも、エゼチミブ投与により有意に増加した(P<0.05、P<0.001)。

 糞便中のコレステロールも、両群ともにエゼチミブ投与群で有意に多かった(ともにP<0.05)。一方、胆汁酸は、高コレステロール餌群でのみ、エゼチミブ投与群で有意に多かった(P<0.05)。

 近藤氏は、「エゼチミブは通常餌と高コレステロール餌を問わず、アテローム形成抑制に寄与すると考えられるコレステロール逆転送の促進作用を示した。ただし肝臓と胆汁においては、通常餌群と高コレステロール餌群の放射能活性が逆転していたため、この経路においては、コレステロール逆転送に関与する未知のゲートキーパーのような機能が存在する可能性が推察される」と語った。

(日経メディカル別冊編集)


[訂正]7/26に以下の訂正をしました。
・近藤氏のお名前が晴美となっていましたが、正しくは春美です。お詫びして訂正いたします。
・タイトルを修正しました。(「マクロファージによる」を「マクロファージからの」に変更しました)