大分大学の油布邦夫氏

 心臓副交感神経系動脈圧受容器反射感受性Baroreflex SensitivityBRS)の低下は、特に女性の2型糖尿病患者において、脳心血管イベントを予見する因子であることが示された。2型糖尿病で入院した患者を対象に平均約5年の追跡調査を行った検討で明らかになったもので、大分大学油布邦夫氏らが7月19、20日と福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で発表した。

 糖尿病は糖尿病性CANと称される心臓血管自律神経障害を起こすことが知られている。しかし、器質的心疾患を持たない糖尿病患者においてBRSが心血管イベントを予測する因子としては確立していないことから、演者らは、BRS低下が2型糖尿病患者において心血管イベントと関連があるとの仮説を立て、今回の検討を行った。

 対象は、大分大学医学部付属病院に1998年以降に入院した糖尿病患者の185例(平均年齢は58±12歳)。ベースライン時にBRSを測定し、3〜10年(平均4.7±2.7年)の追跡調査を行った。1型糖尿病患者、器質的心疾患(EF≦50%)、血清クレアチニン≧1.2mg/dL、妊娠女性、ホルモン療法・ピル使用中などを除外基準とした。主要評価項目はMACCE(急性心筋梗塞、脳卒中、心臓突然死、PCIあるいはGABGを要する虚血性心疾患、入院を要するうっ血性心不全)とした。

 対象者をBRS正常男子(≧6.0m秒/mmHg)、BRS低下男子(<6.0m秒/mmHg)、BRS正常女子(≧6.0m秒/mmHg)、BRS低下女子(<6.0m秒/mmHg)の4群に分けて検討した。

 追跡期間中にMACCEは20例に生じた。内訳は急性心筋梗塞が1例、脳卒中(脳梗塞・脳出血)が9例、心臓突然死が1例、PCIあるいはGABGを要する虚血性心疾患が6例、入院を要するうっ血性心不全が3例だった。

 4群別にKaplan-Meier分析を行ったところ、BRS低下女性は他の3群に比べて有意に脳心血管イベントが多いことが分かった(P<0.05)。また、MACCEに対する多変量解析を行ったところ、女性ではBRS低値と高尿酸血症が予測因子であった。一方、男性では予測因子は抽出できなかった。

 これらの結果から演者らは、「女性でBRSが有意に低値となった明らかな理由は不明」としつつも、今回の検討で、「BRSは2型糖尿病患者の特に女性で脳心血管イベントを予測することが示された」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)