岡山大学の三好章仁氏

 糖尿病患者に対する小腸コレステロールトランスポーター阻害薬のエゼチミブの投与は、LDL受容体を分解する酵素であるPCSK9proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)の濃度に影響を与えずにLDLコレステロール(LDL-C)を低下させることが示唆された。7月20日まで福岡で開催されていた第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で、岡山大学の三好章仁氏らが報告した。

 LDLコレステロール(LDL-C)は、LDL受容体と結合して肝細胞内に取り込まれ分解される。スタチンは、このLDL受容体の発現を促進してLDL-C低下を促すと考えられている。

 LDL受容体はLDL-Cを分解するとリサイクルされるが、PCSK9に結合すると分解されることが示唆されている。スタチンやフィブラート系薬剤は、このPCSK9合成を促進することが近年報告されている。

 三好氏らは、エゼチミブが単剤、またはスタチンとの併用下で、PCSK9濃度に影響を与えるかどうかについて、脂質異常症を合併した糖尿病患者を対象に検討した。

 対象は、スタチンを既に投与されている糖尿病患者5人と、スタチン未投与の糖尿病患者5人。前者にはエゼチミブの追加投与を、後者にはエゼチミブ単独投与を12週間実施し、脂質プロファイルとPCSK9値の変化をベースラインと12週時で比較した。

 スタチン+エゼチミブ併用群とエゼチミブ単独群のベースラインの年齢、性、BMI、血圧値などには差はなかった。また、空腹時血糖値は併用群144.2±45.9mg/dL、単独群135.4±33.9mg/dLで有意差はなかった。

 ベースラインの脂質プロファイルは、併用群で総コレステロール(TC)が229.4±39.2mg/dL、LDL-Cが139.6±22.9mg/dL、HDLコレステロール(HDL-C)が45.2±10.4mg/dLだったのに対し、単独群ではTCが229.1±22.8mg/dL、LDL-C が148.0±15.5mg/dL、HDL-Cが48.8±13.2mg/dLで、いずれも両群に有意差は認められなかった。

 また、トリグリセライド(TG)は併用群の223.0±74.6mg/dLに対し、単独群では161.6±53.2mg/dL、レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)は、併用群の7.3±4.7mg/dLに対し、単独群では4.9±1.4mg/dLと、いずれも単独群で低い傾向が見られた。

 12週時、併用群ではベースラインに対し、LDL-Cは−26.1%、TGは−39.5%有意に低下した(それぞれP=0.01、P=0.03)。RLP-Cは、有意差を認めなかったものの−39.8%と低下傾向を示した。HDL-Cには有意な変化を認めなかった。

 単独群では12週時、ベースラインに対し、LDL-Cは−26.7%、TGは−32.4%、RLP-Cは−21.3%と、いずれも有意に低下した(それぞれP<0.01、P=0.04、P=0.04)。HDL-Cには有意な変化が見られなかった。

 一方、PCSK9値は、ベースラインでは併用群が443±94.1ng/mLで、単独群が194.4±19.7ng/mLだったのに比べて有意に高値であり(P=0.03)、スタチン投与の影響が推察された。単独群のベースラインのPCSK9値は、健常者の平均値との比較で有意差を認めなかった。

 12週時のPCSK9値は、併用群が384.0±71.6ng/mL、単独群が223.4±33.7ng/mLで、いずれもベースライン値との比較で統計学的有意差を認めなかった。

 三好氏は以上の結果から、「糖尿病患者に対するエゼチミブの投与は、単独あるいはスタチンとの併用を問わず、PCSK9値に影響を与えない可能性が示唆された」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)