滋賀医科大学の門田文氏

 一般男性を対象に、NIPPON DATA80を基にした冠動脈死亡絶対リスク別に頸動脈硬化所見の程度を調べたところ、絶対リスクが高いほど頸動脈硬化所見の程度は重いことが示された。また、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012で示された脂質管理目標のカテゴリーIIIに分類された場合は、頸部動脈硬化症の存在を念頭に包括管理する必要があることも明らかになった。

 これは、滋賀医科大学を中心に行われている滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の一環として行われたもので、同大学社会医学講座公衆衛生学部門の門田文氏が、7月19、20日と福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で報告した。

 対象は、SESSAの参加者で、年齢階級別に層別無作為抽出された滋賀県草津市在住の一般住民である40〜74歳の男性871人。循環器疾患の既往がある人は解析から除外した。

 調査は、2006〜2008年に行った。検査項目は、身体計測、血液検査、既往歴、飲酒・喫煙習慣、頸動脈超音波検査、冠動脈CT、baPWV、ESGなどだった。

 頸動脈超音波検査は、ピッツバーグにて手技の標準化および制度管理を行った。その上で、総頸動脈から内頸動脈の内中膜複合体肥厚(IMT)とプラーク数を計測した。なお、超音波検査装置にはXario SSA-660A(東芝メディカルシステム)を用いた。

 解析方法は、NIPPON DATA80リスクチャートを用い、年齢や収縮期血圧、総コレステロール、糖尿病や喫煙の有無の条件を盛り込み、10年以内の冠動脈疾患死亡の絶対リスク(%)を算出した。また、絶対リスクの値によって4群(<0.5%、≧0.5%、≧2.0%、≧5.0%)に分けて比較検討した。

 その結果、絶対リスクが高いほどIMTが肥厚していた。4群(<0.5%、≧0.5%、≧2.0%、≧5.0%)の総頸動脈IMTの平均は、それぞれ0.67mm、0.78mm、0.87mm、0.92mmだった(P for trend<0.001)。また、絶対リスクが高いほど、プラーク数は多いことも分かった。4群(<0.5%、≧0.5%、≧2.0%、≧5.0%)別のプラーク数は、0.9、2.0、2.9、4.1だった(P for trend<0.001)。

 一方、脂質管理のカテゴリー別に、IMT肥厚、プラーク数などを調べたところ、たとえば平均総頸動脈IMTが1mmを超える割合は、カテゴリーIが0%、カテゴリーIIが5.8%、カテゴリーIIIが17.4%となった(P for trend<0.001)。また、プラーク数は、カテゴリーIが0.9、カテゴリーIIが1.9、カテゴリーIIIが3.0だった(P for trend<0.001)。

 これらの結果から演者らは、「NIPPON DATA80のリスクチャートによって推定された冠動脈疾患死亡の絶対リスクは、超音波検査で評価した頸動脈硬化所見の程度を一致していた」と結論した。その上で、絶対リスクを評価することで頸動脈硬化の程度が推計可能であるとした。また、ガイドラインが示した脂質管理目標設定のためのカテゴリー別にみると、カテゴリーIIIに分類された場合は頸動脈硬化症の存在が疑われるとし、「包括管理を行う必要がある」などと考察した。

(日経メディカル別冊編集)