日本大学の田平和宣氏

 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬のエゼチミブは、脂質異常症に対し、アディポネクチンの増加、炎症反応や血管内皮機能低下の抑制を介して抗動脈硬化作用を示す可能性が示唆された。7月19、20日と福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で、日本大学の田平和宣氏らが報告した。

 エゼチミブは慢性腎臓病(CKD)患者を対象としたSHARP(Study of Heart and Renal Protection)研究などの大規模臨床試験で動脈硬化性疾患の予防効果が報告されており、最近では肥満や脂肪肝の改善、酸化コレステロールの吸収抑制、レムナント抑制などの作用も示唆されている。

 田平氏らは、エゼチミブのアテローム生成阻害(動脈硬化抑制)のメカニズムが未だ明らかにされていないことに着目し、血清脂質、糖代謝、肝機能、血漿中酸化ストレス、炎症マーカー、血管内皮機能などに対するエゼチミブの効果について解明を試みた。

 対象は、日大板橋病院を受診したWHO分類2aまたは2b型で未治療の脂質異常症患者18人(うち男性8)。これらの患者は、約6カ月間の食事指導と運動療法を施行後、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版のLDLコレステロール(LDL-C)管理目標値を達成できていないことが確認された。

 試験では、対象者にエゼチミブ10mg/日を24週間投与し、投与前、投与開始12週時、同24週時に空腹時採血を実施して各臨床パラメータの測定を行った。血管内皮機能はRH-PAT(reactive hyperemia peripheral arterial tonometry)を用いて評価した。RH-PATは、上腕駆血開放後の血管拡張反応を指尖部の動脈血流量の変化によって検出する方法で、測定値から算出するRH-PAT indexは、既知の心血管危険因子との関連が認められており、冠動脈の内皮機能障害を予測し得るとされている。

 検討の結果、総コレステロール(TC)はベースラインの256.2±57.1mg/dLに対し、12週時には220.3±41.2mg/dL、24週時には225.8±52.2mg/dLにそれぞれ有意に低下した(いずれもP<0.05)。LDL-Cも、ベースラインの176.1±57.6mg/dLに対し、12週時114.3±70.5mg/dL、24週時112.9±77.8mg/dLにそれぞれ有意に低下した(いずれもP<0.05)。

 Non HDLコレステロール(non HDL-C)は、ベースラインの198.5±62.5mg/dLに対し、12週時163.0±46.2mg/dL、24週時169.3±52.9mg/dLにそれぞれ有意に低下(いずれもP<0.05)。MDA-LDL(U/L)も、ベースライン194.1±82.7U/L に対し、12週時91.6±87.6U/L、24週時106.0±92.2U/Lにそれぞれ有意に低下した(いずれもP<0.05)。またレムナント様リポ蛋白(RLP)は、ベースラインの5.2±2.6mg/dLに対し、24週時には3.4±2.6mg/dLに有意に低下した(P<0.05)。

 HbA1cについては有意な変化を認めなかったが、HOMA-IRはベースラインの7.85±6.40に対し、12週時には5.78±1.62、24週時には7.53±6.06と有意に低下した(いずれもP<0.05)。高分子(HMW)アディポネクチンはベースラインの3.5±2.5μg/mLに対し、24週時4.29±2.73μg/mLに有意に増加した(P<0.05)。

 肝機能の指標であるASTは、ベースラインの28.2±13.9IU/Lに対し、12週時には25.57±8.08IU/Lに、24週時には25.30±6.24IU/Lに有意に低下したが、基準値範囲内の変化だった。

 炎症マーカーでは、高感度CRP(hsCRP)がベースラインの0.08±0.01mg/dLから24週時には0.06±0.04mg/dLに、またPTX3はベースラインの1.94±0.19ng/mLから24週時に1.45±0.19ng/mLに、それぞれ有意に低下した(いずれもP<0.05)。

 RH-PATで評価した血管内皮機能(RH-PAT Index)は、ベースラインの1.39±0.68に対し、24週時には2.15±1.16にとなり、有意な改善が示された(P<0.05)。一方、濃度上昇が血管内皮機能低下を示唆するADMAには、有意な変化を認めなかった。

 また、酸化ストレスのマーカーである8-isoprostaneは、ベースラインの10.92±4.12pg/mLに対し、24週時には8.84±5.05pg/mLに有意に低下した(P<0.05)。

 田平氏は、「今回の検討でエゼチミブはLDL-C低下効果に加え、レムナントの低下、高分子アディポネクチンの増加、炎症反応や酸化ストレスの抑制、血管内皮機能の低下抑制などの効果を示した。それぞれの作用機序は明らかではないが、こうした効果がエゼチミブのアテローム生成阻害の機序に関連し、抗動脈硬化作用につながっている可能性がある」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)


■訂正
・7月25日に以下のとおり、訂正しました。
 第8段落の末尾に、「24週時4.29±2.73μgに有意に増加した(P<0.05)」とありましたが、正しくは、「24週時4.29±2.73μg/mLに有意に増加した(P<0.05)」でした。訂正します。