広島大学の岸川暢介氏

 脂質異常症治療薬の中には、血清コレステロールの低下作用を示す一方で、胆汁中に排出される脂質を増加させ、胆石形成を促すものがあると指摘されている。小腸コレステロールトランスポーター阻害薬のエゼチミブについても、胆管内にも存在するコレステロール膜輸送担体群を阻害するため、胆汁への脂質排出を促進する可能性が懸念された。しかし、エゼチミブ投与患者を1年にわたってフォローアップした研究により、胆汁中の脂質は減少傾向が認められ、むしろ胆石形成を予防する可能性が示された。7月19、20日と福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で、広島大学の岸川暢介氏らが発表した。

 エゼチミブは、主に小腸に発現しているNPC1L1(Niemann-pick C1 Like 1 Protein)と呼ばれるコレステロール膜輸送担体群を阻害することでコレステロール吸収を阻害し、血清中のLDLコレステロール(LDL-C)の蓄積を減少させると考えられている。

 ヒトにおいては胆管側膜にもNPC1L1が発現しているが、エゼチミブ投与によって胆管側膜のNPC1L1が阻害された場合、胆汁中のコレステロール濃度が高まり、胆石形成を促す可能性がある。そこで岸川氏らは、エゼチミブ投与と胆汁中の脂質プロファイルの関連を調べる1年間の前向き研究を実施した。

 対象は、試験への登録に同意した脂質異常症患者10人。これらの患者にエゼチミブ10mg/日を1年間投与し、総コレステロール(TC)やLDL-Cなどの血清脂質とともに、コレステロール吸収マーカーであるカンペステロール、合成マーカーであるラソステロールなどを調べた。加えて、胆石形成の指標となるコレステロール-飽和脂肪指数(CSI)や胆石形成指数を算出するために十二指腸に排出される胆汁を内視鏡を用いて採取し、胆汁中のコレステロール、リン脂質、および胆汁酸の成分比率を解析した。

 検討の結果、TCとLDL-Cは投与3カ月後、1年後に、ベースラインに対していずれも有意に減少した(すべてP<0.05)。一方、トリグリセライドとHDLコレステロールについては有意な変化を認めなかった。

 コレステロール吸収マーカーのカンペステロールは、投与3カ月後と1年後のいずれも、ベースラインに対して有意に減少した(ともにP<0.05)。一方、コレステロール合成マーカーのラソステロールについては、投与3カ月後と1年後に上昇傾向を認めた。

 次に胆汁中のリン脂質、コレステロール、胆汁酸のモル濃度を算出し、それらの比率を求めたところ、コレステロールは、ベースライン、3カ月後、1年後に、10%、6%、5%と漸減傾向を示した。一方、結石形成の予測指標となる胆石形成指数は、ベースライン、3カ月後、1年後において目立った変化はなかった。

 岸川氏は、「エゼチミブが胆石形成を促進する可能性は示されず、脂質異常症の治療薬として安全に使用できると考えられた。胆汁の解析などの評価からは、むしろ胆石を予防できる可能性もあり得る」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)