東京女子医科大学の渡辺絵梨沙氏

 急性冠症候群(ACS)患者における脂質異常症治療とコレステロール吸収マーカーの関連を調べた研究で、スタチン治療にコレステロール吸収阻害作用を有するエゼチミブを追加投与することで、コレステロール吸収マーカーの有意な低下と、LDLコレステロール(LDL-C)のさらなる低下が認められた。7月20日まで福岡で開催された第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で、東京女子医科大学の渡辺絵梨沙氏らが発表した。

 対象は、2010年1月から2011年12月の間にACS発症後10日以内に東京女子医科大学病院に入院し、LDL-Cが100mg/dL以上だった20歳以上の連続110症例。いずれの患者も冠動脈造影検査により、急性心筋梗塞あるいは不安定狭心症と診断されていた。

 除外基準は、ピタバスタチンあるいはエゼチミブに過敏症、またはアレルギー反応の既往がある人、トリグリセライド(TG)400mg/dL以上、家族性高コレステロール血症、6カ月以内のPCIあるいはCABG施行などとした。

 試験はオープンラベルで、まず全例にLDL-Cが100mg/dL未満になるようにスタチンを適宜投与した上で、ピタバスタチン単独投与群(Pit単独群)53例と、ピタバスタチンにエゼチミブ10mg/日を追加する併用群(Pit+EZ併用群)57例に無作為に割り付けた。主要評価項目は、LDL-C、コレステロールの合成マーカーであるラソステロール、吸収マーカーであるシトステロールとカンペステロール、高感度CRP(hsCRP)、アディポネクチンの12週後のベースライン値からの変化率とした。

 Pit単独群とPit+EZ併用群において、ベースラインの患者属性(年齢、性、BMI、喫煙率、代謝性疾患の罹病率)と、LDL-C、シトステロール、カンペステロール、ラソステロール、hsCRP、アディポネクチンの値に有意な差は認められなかった。また、eGFR、尿酸値、HbA1c、脂質などの検査値、スタチン、抗血小板薬、降圧薬などの使用頻度にも差はなかった。

 検討の結果、LDL-Cは、Pit+EZ併用群ではベースラインの132.1mg/dLから60.5mg/dLに、Pit単独群では132.4mg/dLから80.3mg/dLにそれぞれ低下した。変化率はPit+EZ併用群がPit単独群に比べ、約15%有意に大きかった(P<0.001)。

 シトステロールは、Pit+EZ併用群では2.6ng/mLから1.5ng/mLに低下したが、Pit単独群では2.5ng/mLから3.1ng/mLに上昇傾向を認め、両群の変化率に有意差がみられた(P<0.001)。カンペステロールも、Pit+EZ併用群では4.2ng/mLから2.6ng/mLに低下したが、Pit単独群では4.7ng/mLから5.3ng/mLに上昇傾向を認め、やはり両群の変化率に有意差を認めた(P<0.001)。コレステロール合成マーカーであるラソステロールは、Pit+EZ併用群では2.0ng/mLから1.4ng/mLに、Pit単独群では2.3ng/mLから1.4ng/mLにそれぞれ減少傾向を示したが、変化率に有意な差は見られなかった。

 hsCRPは、Pit+EZ併用群で17.6mg/Lから0.9mg/Lに、Pit単独群で14.4mg/Lから2.2mg/Lにそれぞれ低下したが、変化率については両群間に有意差はなかった(P=0.09)。また、アディポネクチンは、Pit+EZ併用群では8.3ng/mLから9.0ng/mL に、Pit単独群では7.1ng/mLから7.8ng/mL にそれぞれ上昇傾向を示した。両群の変化率に有意な差はみられなかった。

 渡辺氏は、「脂質異常症を合併したACS患者において、スタチン療法に加え、エゼチミブを追加投与することで、LDL-Cのより大きな低下とコレステロール吸収の抑制が認められ、有用な治療と考えられた」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)