名古屋大学医学部老年科の林登志雄氏

 後期高齢者糖尿病患者において、虚血性心疾患 IHD) および脳血管障害CVA) の危険因子はHDL-C低値であることが示された。2型糖尿病患者における心・脳血管合併症予防のアプローチ法を年代別に検討している厚生労働科学研究(追跡期間5.5年間)の成果で、名古屋大学医学部老年科林登志雄氏らが7月19日、福岡で開幕した第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で報告した。

 林氏らは、LDL-Cは非高齢糖尿病患者の虚血性心疾患 (IHD) の危険因子であるが、後期高齢糖尿病患者のIHD、脳血管障害 (CVA) の危険因子は不明であることから、その解明に取り組んできた。

 対象は4014人の2型糖尿病患者 (女性1936人、平均年齢67.4±9.5歳、非高齢者1261人、前期/後期高齢者1731人/1016人、平均罹患期間9.68±8.0年)。この集団において、IHDおよびCVAに対する脂質、血糖等の関与をCox比例ハザードモデルで検討した。

 患者は2004年9月〜2005年3月の間に登録され、2010年9月まで (平均5.5年間の追跡)に153人のIHDと104人のCVA (7.8および5.7/1000人・毎年) の発症を認めた。

 Cox比例ハザードモデルによる解析の結果、IHDにおいては、全体でHbA1c(ハザード比:1.171、P<0.05)、LDL-C(同1.218、P<0.05)、HDL-C(同0.751、P<0.01)、LDL-C/HDL-C(同1.583、P<0.01)が危険因子であった。65歳未満ではHbA1c(同1.327、P<0.05)、収縮期血圧(同1.030、P<0.05)、LDL-C(同1.571、P<0.05)、nonHDL-C(同1.028、P<0.05)、LDL-C/HDL-C(同2.324、P<0.01)が危険因子だった。

 一方、65〜74歳では年齢(同1.054、P<0.05)とLDL-C/HDL-C(同1.359、P<0.01)が、75歳以上では性(女性、同1.132、P<0.05)、罹患期間(同0.992、P<0.05)、HDL-C(同0.629、P<0.01)、LDL-C/HDL-C(同1.407、P<0.05)がそれぞれ危険因子だった。

 CVAにおいては、全体でHDL-C(オッズ比[OR]:0.84、P<0.01)、65歳未満でLDL-C(同1.002、P<0.05)とnonHDL-C(同1.007、P<0.05)、65〜74歳でHDL-C(同0.92、P<0.05)、75歳以上で年齢(同1.03、P<0.05)とHDL-C(同0.54、P<0.01)がリスクとして浮かび上がった。

 これらの結果から演者らは、「後期高齢糖尿病患者のIHDとCVAにおいては、HDL-C低値がリスクとなる」と結論。また、動脈硬化性疾患の危険因子が年齢により変化する可能性は個別医療の重要性を示唆する、とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)