京都大学人間健康科学系専攻の荒井秀典氏

 日本人一般住民における他の脂質異常を伴わない低HDLコレステロール(HDL-C)血症の有病率は、欧米の基準で検討すると男性が平均5.64%、女性が平均10.00%であることが分かった。また、高齢になるほど割合が高まる傾向が見られる一方、男性より女性で高いことも分かった。京都大学人間健康科学系専攻の荒井秀典氏らが、7月19日に福岡で開幕した第44回日本動脈硬化学会(JAS2012)で発表した。

 2011年、米国のHuxleyらは、日本人を含むアジア人と、ニュージーランド人およびオーストラリア人の低HDL-C血症の頻度を比較した結果をCirculation誌に報告した。その中で、アジア人の有病率は22%と報告されていたが、荒井氏はあまりにも実臨床と食い違っている印象を受けたという。そこで今回、2000年に実施した日本人の血清脂質調査のデータを用いて検討した。

 年齢が20歳から79歳までの1万1715人(うち男性7088人)で、脂質低下薬を服薬していない人を対象とした。欧米における他の脂質異常を伴わない低HDL-C血症の診断基準は、HDL-Cが男性は40mg/dL未満、女性は50mg/dL未満、かつトリグリセリド(TG、中性脂肪)が200mg/dL未満、LDLコレステロール(LDL-C)が160mg/dL未満としている。一方、日本での診断基準はHDL-Cが40mg/dL未満、TGが150mg/dL未満、LDL-Cが140mg/dL未満となっている。今回は、欧米と日本の2つの基準で検討した。

 欧米の基準に則った有病率は、男性が5.64%、女性が10.00%だった。さらに、年代・性別に罹患率を見ると、20歳代は男性4.85%、女性6.18%、30歳代は男性5.11%、女性8.75%、40歳代は男性5.23%、女性11.0%、50歳代は男性5.17%、女性8.89%、60歳代は男性7.98%、女性13.3%、70歳代は男性9.65%、女性16.8%と、高齢になるほど有病率が高まる傾向にあった。また、いずれの年代でも男性よりも女性の方が有病率は高かった。一方、日本の基準に則って検討すると、全体の有病率は3%弱と低かった。いずれの年代でも男性の方が有病率は高かったが、高齢になるほど有病率が高まる傾向は欧米の基準の場合と同様だった。

 今回の結果は、欧米の基準に則って検討してもHuxleyらの報告よりも頻度は低かった。Huxleyらの報告のデータと荒井氏らのデータには10年の差がある。しかし、荒井氏は、22%という数字が報告された理由として、10年の違いは特に影響していないとみている。「日本人のHDL-C値は、約20年で10mg/dL近く上がっているとの報告があるが、その間に食事や運動、喫煙などのライフスタイルに大きな変化があったとは言えない。それよりも、HDL-C値が上昇した理由としては、1996年ごろを境にHDL-Cの測定法が沈殿法から直接法に変わったためと考えられる」と考察する。つまり、1990年のデータと2000年のデータでは、HDL-Cの測定方法が異なっているので、今後はHDL-Cの測定方法に留意する必要があり、改めて測定方法を検討するべきだと語った。

(日経メディカル別冊編集)

■訂正
・7月24日に以下の修正を行いました。
 最後の段落に「Huxleyらの報告は、NIPPON DATA 90のデータを使用しており、荒井氏らのデータは2000年のものなので、10年の差がある」とありますが、「Huxleyらの報告のデータと荒井氏らのデータには10年の差がある」と改めました。