ひつもと内科循環器科医院(山口県下関市)院長の櫃本孝志氏

 高齢者を対象に血中イコサペント酸EPA)値と動脈硬化の諸指標との関連性を調べた結果、血中EPA値の低下が心血管イベントのリスク因子であることが示唆された。ひつもと内科循環器科医院(山口県下関市)院長の櫃本孝志氏らが、7月15日から開催されていた日本動脈硬化学会JAS2011)で発表した。

 対象は心血管イベントの既往を有する高齢者358例で、血中EPA値を測定するとともに、古典的な冠リスク因子の保有状況、炎症マーカーであるhs-CRP値、酸化ストレスの指標としてd-ROM(reactive oxygen metabolites)検査値、動脈硬化の指標であるCAVI(Cardio-Ankle Vascular Index)、総頸動脈の拍動指数PI(Pulsatility Index)を調べ、血液流動性測定装置(MC-FAN)を用いて血液流動性を測定した。

 なお、これまでに櫃本氏らはMC-FANを用いて血液のマイクロレオロジーを測定し、血液(100μL)通過時間が55秒を超えると心血管疾患の保有率が有意に上昇することを報告している。

 対象の年齢は76±7歳、冠危険因子保有率は高血圧が77%、糖尿病が19%、肥満が20%、喫煙が10%で、血清脂質値は総コレステロール(TC)値が223±40mg/dL、LDLコレステロール(LDL-C)値が140±38mg/dL、トリグリセリド(TG)値が148±66mg/dL、HDLコレステロール(HDL-C)値が53±15mg/dL、non HDLコレステロール値が171±40mg/dLだった。

 また、EPA値は90±52μg/mL、hs-CRP値は1.4±1.4mg/L、d-ROM検査値は371±81、CAVIは9.4±1.1、PIは1.9±0.5、血液(100μL)通過時間は59±16秒だった。

 血中EPA値は加齢とともに低下したが(r=−0.19、p<0.001)、性別や冠危険因子の保有状況、血清脂質値とは有意な関連性は認められなかった。

 しかし、血中EPA値はCAVI(r=−0.17、p<0.01)、PI(r=−0.19、p<0.001)、hsCRP値(r=−0.16、p<0.01)、d-ROM検査値(r=−0.32、p<0.0001)、血液通過時間(r=−0.36、p<0.0001)とはそれぞれ有意に相関し、血中EPA値は血液流動性にも影響を及ぼすことが示された。

 また、血中EPA値あるいは血中EPA/アラキドン酸比を従属変数とした多変量回帰分析では、d-ROM検査値、PI、血液通過時間が独立した説明変数であることが明らかとなった。

 以上の検討から櫃本氏は、血中EPA値の低下は心血管イベントを予測するのではないかと述べ、特に日本人高齢者では血中EPA値の低下は脳梗塞の重要なリスク因子の可能性があるとの見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)