石川県済生会金沢病院糖尿病・内分泌内科の古川健治氏

 エゼチミブには、LDL-コレステロール(LDL-C)の低下だけでなくインスリン抵抗性改善効果もある可能性が実臨床における検討で示された。札幌市内で7月15日から16日まで開催された日本動脈硬化学会JAS2011)において、石川県済生会金沢病院糖尿病・内分泌内科の古川健治氏らが報告した。

 エゼチミブにインスリン抵抗性改善作用があることを示した基礎データは存在するが、その作用が臨床的に意味のあるレベルの「改善」につながるか否かは明らかでない。古川氏らは、エゼチミブによる治療を受けた患者において、治療前後の脂質代謝プロファイルの変化だけでなく、糖代謝プロファイルの変化についても比較し、臨床的な「インスリン抵抗性改善効果」の有無を検討した。

 対象は、高コレステロール血症と糖代謝異常を有し、スタチンによる治療にもかかわらず「動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)」が定めるLDL-C管理目標値を達成できなかった51人。平均年齢は64.0歳、男性比率は54.9%(28人)で、BMIは25.4、腹囲は95.9cmだった。

 古川氏らは、これらの患者に対してエゼチミブ10mg/日を追加投与し、平均4.2カ月の治療を行った。これにより、患者の血清脂質値は有意に改善された(総コレステロール[TC]:-16.9%、p<0.001、LDL-C:-22.1%、p<0.001、トリグリセリド[TG]:-18.2%、p<0.001、HDL-C:+4.5%、p<0.05)。

 また、血清脂質値とは独立した動脈硬化の危険因子として知られるレムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)は22.1%低下していたが、ハイリスク域といわれる5.2mg/dL以上の患者では36.8%と大きく低下していた。また心筋梗塞の危険因子の1つとされるapoB/A-1比も17.8%低下していた(すべてp<0.001)。

 糖代謝に関しては、血糖値は治療前の138.8mg/dLから132.0mg/dLに低下していた(-18.2%、p<0.05)が、HbA1c値は変化が見られなかった。また、血清インスリン値は治療前より有意に低下しており(8.8単位/L → 7.7単位/L;p<0.05)、HOMA-IRの有意な改善が認められた(2.9 → 2.4、p<0.01)。

 追跡期間中に問題となる有害事象は認められなかった。

 これらの結果により、高コレステロール血症と糖代謝異常を合併した患者に対し、エゼチミブはTCやTG、LDL-C、HDL-Cのインバランスを是正し、脂質異常症を改善するだけでなく、動脈硬化の危険因子とされるRLP-Cやapo B/A-1比の低下や、インスリン抵抗性の改善をもたらすことが示唆された。

 エゼチミブによるインスリン抵抗性改善の機序は明らかになっていないが、過去の報告では、同剤には肝細胞における酸化ストレス、小胞体ストレスの低減作用や、小腸における長鎖脂肪酸の吸収阻害作用、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1活性増強作用、膵β細胞数の増加作用、肝における脂質合成転写因子SREBP1-c発現抑制作用などが示唆されており、これらがインスリン抵抗性改善機序の一端を担っていることが推測されるという。

 こうした特徴を持つエゼチミブは、「糖代謝異常を合併した高コレステロール血症患者の脂質低下療法の有力な選択肢となるだろう」と古川氏らは述べた。


(日経メディカル別冊編集)