東邦大学医療センター佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センターの齋木厚人氏

 生活習慣病を改善し動脈硬化の進展を抑制する上で、食事療法が重要であることは言うまでもない。7月15日から札幌市で開催されていた日本動脈硬化学会(JAS2011)で、東邦大学医療センター佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センターの齋木厚人氏は、低糖質食やフォーミュラ食の抗動脈硬化作用について講演し、フォーミュラ食に含まれるアミノ酸の意義などを解説した。

 齋木氏らは、肥満を伴う糖尿病腎症患者にフォーミュラ食を用いた食事療法を行うことで、体重や内臓脂肪面積が減少し、血圧や血糖、血清脂質だけでなく腎機能も改善することをこれまでに報告しており、その背景には酸化ストレスの軽減があると考えられた。また最近では体重や内臓脂肪面積の低下に伴って、動脈硬化指標の1つであるCAVI(Cardio-Ankle Vascular Index)が改善することも明らかになっている。

 食事療法の原則は、低カロリーで、蛋白やビタミン、ミネラルをバランスよく摂ることだが、蛋白や脂質、糖質の適切な配分については明らかになっていない。そこで齋木氏は、低カロリー食の中でも低糖質食とフォーミュラ食(高蛋白・低糖質・低脂質食)の有用性について検討した結果を紹介した。

 まず、肥満を伴う2型糖尿病患者を対象とした検討では、摂取カロリーが同一であれば、低糖質食の方が高糖質食に比べて内臓脂肪面積やインスリン値、HDLコレステロール(HDL-C)値などの改善効果は大きかった。また、低糖質食と低脂質食を比較した臨床試験の海外のメタ解析では、低糖質食は体重低下や中性脂肪(TG)改善効果に優れており、低脂質食は総コレステロール改善効果に優れていた。

 空腹時と食後2時間の血糖変動を調べたところ、低糖質食に比べて高糖質食の方が変動幅は大きかったことから、高糖質食では食後の血糖上昇に伴うインスリン分泌の亢進が内臓脂肪の蓄積を促している可能性が示唆された。また、メタボリックシンドローム患者を対象とした検討で、低糖質食群では成長ホルモンの分泌が亢進していたことから、それが脂肪分解を高め、内臓脂肪面積を低下させた可能性が考えられた。

 一方、肥満を伴う2型糖尿病患者を対象に、通常食とフォーミュラ食が体重や代謝系に及ぼす影響を検討した臨床試験では、フォーミュラ食群では通常食事群に比べて、体重、HbA1c、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、収縮期血圧、TGがより低下し、HDL-Cはより上昇した。しかし、両群の食事のコンプライアンスに違いがあったため、その影響を除外するために、体重が1%低下したときの心血管リスク因子の改善度を比較したところ、フォーミュラ食群では通常食群に比べて、内臓脂肪面積、HbA1c、TG、HDL-Cの改善度が有意に大きかった。

 フォーミュラ食に特有の作用を調べるために肥満糖尿病ラットを用いた検討を行った。その結果、低脂質食に比べてフォーミュラ食では内臓脂肪重量が低下し、腸間膜脂肪組織では脂肪分解やインスリン抵抗性に関連したPGC-1α、アディポネクチン、リポ蛋白リパーゼ、PPARγなどのmRNA発現が亢進していた。さらに、血中の成長ホルモン濃度や肝臓におけるIGF-1 mRNA発現も亢進し、肝臓の脂肪蓄積量が低下していた。

 こうした知見から齋木氏は、「低糖質かつ高蛋白のフォーミュラ食は、食後の血糖上昇の抑制がインスリン分泌量を低下させ脂肪蓄積を抑制するとともに、成長ホルモン分泌を促進して脂肪分解を亢進させる。また、フォーミュラ食に含まれるアルギニンのようなアミノ酸は脂肪酸のβ酸化を促進させ、筋肉へのアミノ酸の取り込みを促進して筋肉量を増加させ、内臓脂肪組織の脂肪分解を促進するのではないか」との考えを示した。

 さらに、動脈硬化の進展を抑制するための最適な食事組成は低カロリーであることが基本だが、高糖質食に比べると低糖質食の方が優れており、今後はフォーミュラ食に含まれるアミノ酸の効果の解明が期待されると述べた。

(日経メディカル別冊編集)